MU-TON(2018年『UMB』チャンピオン)インタビュー Part 1

MU-TON(2018年『UMB』チャンピオン)インタビュー Part 1

Shure Japan | 2019年4月19日

2016年、日本のMCバトルシーンに突如登場し、『UMB』(=ULTIMATE MC BATTLE)福島代表として、初出場ながら本戦にてベスト8にまで勝ち上がり、一気に注目の的となったMU-TON(ムートン)。2018年末に開催された『UMB GRAND CHAMPIONSHIP 2018』では、三度目の『UMB』挑戦で見事に初優勝を果たし、文字通り、MCバトルシーンの頂点を極めた。その一方、地元福島・白河にて結成したラップグループ、TRI MUG’S CARTELの一員としての活動と並行して、ソロアルバム『RIPCREAM』を昨年(2018年)末にリリースするなど、福島を代表するアーティストとして日本のヒップホップシーンでも知られる存在となっている。これまでの『UMB』優勝者ともまた異なる、独自のリアルなヒップホップ観を持つMU-TONに、これまでの活動経歴から、ラップに対する思い、そしてマイクへのこだわりについても伺ってみた。

文・写真 / 大前 至


 

–まずは、ラップとの出会いから教えてください。

もともと、自分の従兄弟が東京でヒップホップのダンサーをやっていて、ラッパーの鬼(注:福島県いわき市出身のラッパー)と一緒に活動もしていたりしていて。16歳くらいの時に、その従兄弟が地元に帰ってきてから、彼の影響で聞くようになりました。

 

–それは日本語のラップということでしょうか? それとも海外のラップですか?

最初は日本語ラップで、多分、AK-69だったと思います。その当時、めっちゃ流行ってたんで。けど、正直、その時はまだあんまりピンとこなくて。「こういう音楽もあるんだ?」っていう程度でした。

 

–そこから、日本語ラップに目覚めていったのは?

『UMB』の本戦にも出ている、地元のJAG-ME(ジャグメ)っていうラッパーのCDを最初に渡されて、それを聞いてからですね。JAG-MEのライヴも生で観て、「スゲェ!」ってかなり喰らいました。それまで地元にそういうシーンがあるっていうことも全然知らなくて。そうやって、地元の音楽に影響されて、ラップを始めました。

 

–その頃の白河のシーンってどういう感じでしたか?

う~ん……田舎ですね(笑)。3年前に無くなっちゃいましたけど、白河の駅前にGUEROVER(ゲロバー)っていう名前のクラブがあって。そこでイベントとかをやっていました。その当時の白河のシーンは、自分たちだけで楽しくやっているんですけど、それより広くは行こうとせずって感じでしたね。

 

–GUEROVERに通いだして、自分でもラップをするようになったのでしょうか?

そうですね。最初は同級生とちょっとフリースタイルをしたり、サイファーみたいなことをやっていました。あと、フリースタイルだけじゃなくて、自分の曲も書くようになったり。高校の頃に、AURAL TEMPT(オーラル・テンプ)っていうクルーを、DARK(ダーク)とS-G(スージー)っていうラッパーと3人で組んで。そのAURAL TEMPTでライヴとかをやっていました。

 

–ラップのスタイルとしては、今、TRI MUG’S CARTELとして一緒に活動している、TAIC(タイシ)からの影響も大きいそうですが、彼とはどのように出会ったのでしょうか?

JAG-MEとTAICが隠密48っていうクルーを組んでやっていたので、それで隠密48のライヴを観るようになってからですね。JAG-MEのラップが格好良いと思っていたんですけど、最初、TAICのほうは何を言っているのか全然聞き取れなかったんで、「なんだ、こいつ?」みたいに思っていたんですよ。けど、ビギー(ノトーリアス・B.I.G.)とかエミネム、ウータン・クラン、トゥパックとか、洋楽のヒップホップを聞くようになってから、「あいつ、ヤバいじゃん?!」ってなって。だから、TAICの良さに気付いたのは、後からですね。それから、自分のスタイルが出来ていきました。

 

–自分のスタイルというのは、フロウや音としての言葉の聴こえ方を重視するという感じでしょうか?

そうですね。けど、そんなに難しく考えたことはないです。ただ自分は洋楽のヒップホップが好きなように、聴き心地が良い音楽が好きなので。自然とフロウとかを磨いてきたんだと思います。あと、白河の人たちは、グルーヴが似ていて。音の取り方とかハメ方も、みんな似てるところがあるんで。やっぱり地元の音楽の影響で、そういうノリになっていたっていうのはあります。白河に生まれてなかったら、こういうラップは絶対にしていていなかったでしょうね。

 

–自分のラップの特徴というか、強みって何だと思いますか?

やっぱり、グルーヴの強さだと思うんですよね。グルーヴ感が人より半端ないというか、他の人とはグルーヴの作り方が違うんだと思います。

 

–それは長年鍛え上げて完成したものなんでしょうか? それとも最初から自分の中にあったもの?

う~ん……、多分、本当に感覚的なものですね。友達が持っていた、結構前の自分のフリースタイルを録ったものを聴くと、言っている内容は変わっていますけど、音の取り方自体とかは今と同じ感じなんですよね。逆にそろそろ変えていって、違う見せ方をしないといけない時期かなとも思っています。

 

–JAG-MEもTAICも、それぞれ『UMB』の本戦に出場しているわけですが、彼らの活躍を見て、自分でもバトルに出ようなったわけですか?

TAICが2008年の『UMB』の本戦に出た時に、一回戦で負けて。リアルタイムではないんですけど、何年か後にその時の映像を観たら、TAICに対してお客さんの歓声が湧かないのが、本当に理解出来なくて。「何でこの格好良さが分からないんだろう?」ってずっと思っていたし、ちょっとムカついてもいて。それに対する苛立ちというか。それで、自分も『UMB』に出てみようと思ったというのはありますね。

 

–2016年の『UMB』で福島代表になって、それで名前が知られるようになったわけですけど、実際にMCバトルに出始めたのはいつからですか?

その前に、地元の小さいMCバトルの大会に一度出たくらいなので、正式な大会は多分、その年の『UMB』が最初ですね。福島予選の前に、栃木の予選に出ていて。栃木では優勝出来なかったんですけど、福島では優勝して。

 

–福島予選では勝算はありましたか?

はい。同じ予選にTRI MUG’Sのロープが出ていたんですけど、その当時、自分と同じくらい格好良いと思っていたのがロープしかいなかったので、ロープに負けさえしなければイケるだろうって思っていました。

 

–福島代表になって、その年末の『UMB』本戦ではベスト8まで進んだわけですけど、実際に本戦に行ってみていかがでしたか?

最初に本戦へ行った時は、緊張してましたね。あれは結構、メンタルの強さが問われるものだなって思いました。本戦の出場者は皆んな、地方予選を勝ち抜いてきているんで、それぞれスキルはあると思うんですよ。けど、その中で勝つためには、どれだけ普段通りのラップが出来るかどうかっていうところなのかなって。ベスト8でニガリ君(MCニガリ aka 赤い稲妻)と当たりましたけど、全然ダメでしたね。ニガリ君、上手かったです。

 

–その翌年、2017年は、『UMB』以外にもいろいろなMCバトルの大会に出て活躍していましたが、それは『UMB』に出たことでバトルに対しての闘争心に火がついたということでしょうか?

いや、そんなことも無かったですね。バトルはラッパーとして名前を売るための手段って思っているので。でも、2017年の『UMB』本戦に宮城代表で出て、一回戦で負けた時は、結構焦りました。悔しかったというよりも、冷や汗かきました。その年は優勝する気でいたので、「やっちまった……」っていう気分でした。

 

–そうだったんですね。ちなみにフリースタイルの練習とかって普段からやっていたりするのでしょうか?

いや、一切しないです。最初に『UMB』の福島予選に出た時から、フリースタイルの練習はやってないです。昔、駅前とかで、皆んながサイファーやって、必死こいてフリースタイルの練習をしていた時に、TAICが「練習って言っている時点で、もう、それはライフスタイルじゃないじゃん」って。「いつ振られても、音源と同じようなノリでフリースタイルを出来るのが、本物のラッパーだろ」みたいなに言っていて、「確かに!」って思って。ラッパーっていうのはライフスタイルなんだから、いつフリースタイルを振られようが関係無い。それを練習と捉えて、サイファーをするのはちょっと違うなと思って。それから一切やってないですね。

 

–フリースタイルするのはステージ上であったり、バトルの場だけであって。練習のためではなくて、常に本番という感じですか?

まあ、そこまで格好良いものではないですけど(笑)。けど、気持ち的にはそうですね。

–2018年の『UMB』では地方予選にはエントリーせずに、敗者復活戦である『UMB REVENGE』から本戦出場を果たしたわけですが、地方予選に出なかったのは、前年の一回戦敗退が影響したのでしょうか?

いや……どうでしょうかね。2016年に福島で優勝して、次の年に宮城で取ったので、また違うところで出ようかなとは思ってたんですけど。ただ、正直、『UMB』に出場するか、悩んではいましたね。「勝てないかな?」みたいに思っていたところがあって。

 

–そうだったんですか? それは、かなり意外ですね。

本戦のベスト8とかベスト4になってくると、結構、スキル云々じゃないところも出てくると思うんですよ。大会に賭ける気持ちとか。皆んな、本当に必死こいて出場していると思うので。正直に言うと、自分はそこまでの欲が無いんですよ。『UMB』は昔から観ていたので、優勝したいっていうのはあったんですけど。他の大会とかに出ても、そこまで優勝したいとも思っていなくて。あくまでも、自分の名前を売るためとしか思ってなくて。やっぱり、ベスト4あたりになってくると、ガチできている人たちは本当に凄いので。「あ~、ヤベぇ! 返せない!』ってなっちゃう時があるんですよ。

 

–とはいえ、結果的に昨年の『UMB』では見事に優勝したわけですけど、本戦に出た時の気持ちはどうでしたか?

あの時はちょうど、12月にアルバムをリリースして、気持ち的にも乗っていたので。本戦の日も、絶対に勝つって決めていたし、「今日は絶対に優勝する」って思っていましたね。

 

–あの日のバトルの中で、印象深かった対戦相手は誰ですか?

(準決勝での)紅桜さんとの試合が一番印象に残ってますね。やっぱり、紅桜さん、格好良かったですし、バトルをやっていて楽しかったです。凄くテンション上がりましたね。

 

–MCバトルって楽しさって、どこにあると思いますか?

即興なんで、その即興の新鮮さを、聴いている側もやっている側も、そのまま楽しめる部分だと思います。けど、そのバトルが楽しいかどうかは、やる相手とビートとか、その試合によりますね。あと、やっぱり、自分は音楽性としてのラップを競うのが好きなので、内容重視で、“ザ・会話”みたいなものを求めてくる人とのバトルは疲れますし、あまり面白くないです。

 

–MU-TONさんのバトルのスタイルって、フリースタイルではあるんですけど、まるでライヴを聴いているような感じですよね?

そうですね。それが多分、先ほどのTAICが言っていた、ライフスタイルかどうかっていうところに繋がるんだと思います。最近のバトルMCたちは、曲とかライヴとかになると格好良くないのは、ラップするっていうことがライフスタイルになっていなくて、全く別のものなってるからなんじゃないかな?って。

 

–改めて、『UMB』優勝の感想っていかがですか?

結構、良いですね(笑)。メンタル的にも凄く良いです。

 

インタビューの続きは Part2 でチェック!(近日公開予定)

 


【MU-TON】福島県白河市出身のラッパー。 小峰の城下からの刺客「TRI MUG’S CARTEL」所属。
2016年にMC BATTLE界に彗星の如く現れ、数多くの全国大会で功績を収め、瞬く間に名前が全国区に広まる。”UMB 2018”での優勝は記憶に新しいであろう。
2018年12月に1stアルバム『RIPCREAM』を発表し、独特のグルーヴ感溢れる多彩なフロウと音楽性に富んだ唯一無二なスタイルが高く評価される。週末は全国各地にて精力的なライブ活動を行っており、今後さらなる活躍が期待されるアーティスト。

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