Case Study

劇団四季様|ミュージカルの現場を支えるワイヤレスシステム|AXT Digital

December 25, 2025 |
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“SHUREは、“何をしたらもっと良くなるのか”を常に考えている、高い向上心を持ったメーカーだと思います。”

劇団四季 音響・音楽部 音響 森下氏

お客様プロフィール

◎導入事業者
劇団四季
https://www.shiki.jp/

◎導入場所
JR東日本四季劇場[秋](ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』公演にて)
 

課題

2025年4月、JR東日本四季劇場[秋]にて、ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が開幕しました。ワイヤレスシステムにおいて、これまでは送信機を俳優の衣装やカツラなどに仕込む際に、アンテナ部分が装着の妨げとなり、取り付けの手間や破損の原因になっていたほか、3つの劇場が隣接しているエリアのため、相互電波干渉も懸念されていました。

ソリューション

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の音響デザインを手掛けたギャレス・オーウェン氏による緻密な設計に基づき、常設機材を一新。その中核となるワイヤレスシステムとして、AXT Digitalが採用されました。送信アンテナを内蔵したボディパック型送信機ADX1Mの装着時の取り回しのしやすさや、最長5分間さかのぼって音声を再生できるインスタントリプレイ機能を備えたモニタリング用ソフトウェアWAVETOOLの使い勝手の良さなど、ハードウェアとソフトウェアの両面が高く評価されました。

効果

送信アンテナ内蔵のボディパック型送信機ADX1Mによりフィット感が向上。アンテナ部分が邪魔になるという課題が解消され、装着する俳優の負担や取り付け作業の手間が軽減されました。また、懸念されていた相互電波干渉についても、シュア・ジャパン作成の周波数プランにより、安定した運用が実現しています。さらにモニタリング用ソフトウェアWAVETOOLによりノイズなどトラブルの原因特定がしやすく、迅速な問題解決が可能になったほか、1Uサイズで4chに対応する受信機AD4Qは、省スペース化に貢献しました。
 

【スペシャルインタビュー】


現場の声を具現化したボディパック型送信機

劇団四季は、ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の公演に合わせ、ワイヤレスシステムAXT Digitalを導入しました。

検聴エリアに設置されているシステム全体像
検聴エリアに設置されたアクセスポイントのAD610。このほか、舞台の下手と上手にも1台ずつ設置している

劇団四季の全演目の機材導入と設置を担う森下氏は、AXT Digitalの開発段階から関わっており、ボディパック型送信機について提案する機会がありました。

「シカゴにあるShureの本社で、ミュージカルで使用するボディパック型送信機はどんなものがよいのか、提案させていただきました。“角張っていなくてアンテナがなく、LEMOコネクターが本体から出っ張らずにへこんでいて、軽くて薄いもの”と、絵を描いて説明しました。きっと世界中の人が同じようなことを言っていたんでしょう。まさにお伝えした通りのものが完成したので、ずっと使ってみたかったんです。今回ようやくそのチャンスが巡ってきました」と森下氏は述べています。

劇団四季の全演目の機材導入と設置を担う森下要氏
公演で使われているボディパック型送信機ADX1M。下段に置かれているものは1人で2個装着するものだという。役によって途中で交換することが難しい場合はバックアップ用に2個装着することがあるという
KSM11カプセルを搭載したハンドヘルド型ワイヤレス送信機のADX2/K11。舞台演出で使用している
1Uのラックマウント型充電ステーションSBRC×5。Shureボディパック型およびハンドヘルド型送信機用充電池を最大8個同時に充電可能。Wireless Workbenchにより、バッテリー残量の遠隔モニタリングも可能

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の公演で導入されたボディパック型送信機ADX1Mは計30台に上ります。現場では、俳優のかつらの中に仕込んだり、ゴムベルトに仕込んで背中や腰に巻き付けたり、メインとバックアップで2つ装着したりと、さまざまな方法で使用されています。森下氏は「この送信機は本当にほかに代わりがありません」と評価。続いて本公演開幕時のチーフオペレーターを担当する市川氏は、ADX1Mの取り回しの良さについて次のように語ります。「これまでは、送信機を衣装やかつらに取り付ける際に、アンテナやコネクターが邪魔になるという苦情がくるのが通常でしたが、今回は本体が非常に小さくなっているので、そういった苦情はほとんどありませんでした」

本演目開幕時のチーフオペレーターを担当する市川遣吾氏
マイクヘッドのカプセルは、メインとバックアップの2種類を糸で巻き固定して使用した。ワイヤレス・マイク・ケアを担当した林氏と仲井氏は、ケーブルの色を目立たないよう加工したり、俳優に合わせて角度を調整したり、汗を外に逃がす仕掛けなどを手作業で施した
ボディパック型送信機ADX1Mの運用例。左は、役に合わせてゴムベルトをベスト形に調整し、2台の送信機を装着できるようにしたもの。俳優が演目中に動きやすいよう、背中にフィットするようになっている。その右上はゴムベルトで腰に巻き付けて使用するもので、右下はかつらの中に仕込めるようになっている

迅速な問題解決を可能にするソフトウェア

AXT Digitalは、ハードウェアだけでなく、ソフトウェア面についても高く評価されています。ワイヤレス・マイク・ケアを担当する林氏は、「スペクトラムマネージャーのAD600で電波を可視化できるのがありがたいです。また、ShowLink機能のおかげで受信機の周波数を変えると送信機も自動で連動して周波数が変わるのも便利」と語り、同じくワイヤレス・マイク・ケア担当の仲井氏は、「ShowLinkのおかげで作業の手間が減りました。以前は送信機を1台ずつ開けて周波数を確認したり、周波数を変えるために送信機と受信機を赤外線で同期させる必要がありましたが、今は受信機やWireless Workbenchからすべて対応できます」と述べています。

本演目開幕時ワイヤレス・マイク・ケアを担当する林拓真氏
本演目開幕時ワイヤレス・マイク・ケアを担当する仲井風美氏

本番中の検聴には、モニタリング用ソフトウェアWAVETOOLを活用。検聴は、一人目の俳優が舞台に出る前から一言目をしゃべるまでを見届け、また次の俳優をモニターするという流れで行われています。林氏は、「これまでは検聴専用の音響卓を置いていましたが、その必要がなくなりスペースが削減されました」と、WAVETOOLによる省スペース化のメリットを語ります。さらに仲井氏は「本番中、検聴エリアに1人しかいなくても遠くで起きたトラブルに対応することが可能です。逆に検聴エリアを離れる際は、iPadを持って行って確認することもあります。例えば送信機に汗が入り拭き取りに行く際も、iPadでその場で動作の復旧を確認できるため、移動時間の大幅な短縮につながり、非常に助かっています」と、運用における効率性の向上について述べています。

導入されたソフトウェア。左画面がWAVETOOL、その右がWireless Workbenchを表示している。右上のiPadはWAVETOOL用で、リモートでの運用も行っている


舞台袖と検聴エリアのコミュニケーションには、WAVETOOLのチャット機能も活用されています。そして、このソフトウェアの機能で最も重宝されているのが、最長5分間さかのぼって音声を再生できるインスタントリプレイ機能です。仲井氏は、「俳優の汗を拭きに行く間など、どうしても聴けない時間が発生しますが、その間に何が起きたかをリプレイで確認できます」と多忙な現場における実用性を強調します。市川氏もこの点に同意しており、「私もこの機能が一番の魅力だと思います。普通はノイズが発生しても、さかのぼって原因を特定することはできません。インスタントリプレイ機能があることで、問題解決にいち早く近づくことができるんです」と語ります。

省スペース化や運用効率を高めるワイヤレス受信機

ワイヤレス受信機AD4Qについて、森下氏は省スペース化と運用効率を特に評価しており、次のように述べています。「これまで1Uの受信機は2chが一般的でしたが、AD4Qは4ch受信できるので、これだけのチャンネル数があるのにラック1台で収まっています。かなり省スペース、省電力になってとても良いですね。フロントパネルでRF信号の強度や音量レベルなど、見たい情報をしっかり表示してくれます。さらに電源もカスケード接続できるので、配線がかなり楽になりました。これは現状Shureだけだと思います」

スペクトラムマネージャーのAD600、4chデジタルワイヤレス受信機AD4Q×5、AXT用アンテナ分配機AXT630J×2が格納されている


さらに、Dante Cue機能も現場の効率化に貢献しています。林氏は「Danteで接続してあればネットワーク内のすべての受信音声を1台の受信機からモニターできるので、とても便利です」と語ります。この機能について森下氏は、次のように補足します。「従来はモニターしたい音声を受信した受信機にヘッドホンを毎回差し替えていたので、ヘッドホンやヘッドホン端子が痛んでしまい、受信機ごと修理に出すということもありました。でもDante Cueを使えば1台で全チャンネルのモニターができるので、ヘッドホンの差し替えが不要で、ヘッドホンや受信機のヘッドホン端子が壊れる心配もなくなりました」

AXT Digitalは多チャンネルを扱う現場に自信を持ってお薦めできる製品

音響のオペレートを担当する市川氏は、AXT Digitalを導入したことによるサウンド面におけるメリットについても言及しています。「ヘッドセットの場合はマイクが口元に近いので、声を張り上げた後にささやいたりすると、音を拾いにくいことが多いんです。でも今は、バンと張り上げた後でぼそっと話しても、ちゃんと聴こえています。もちろんマイクやスピーカー、卓など、いろいろほかの要素もあると思いますが、AXT Digitalのダイナミックレンジの広さが一役買っているのは間違いないと思いますね」

シュア・ジャパンの対応も高く評価されており、森下氏はその信頼関係について次のように語ります。「開幕の1、2年ほど前から、シュア・ジャパンの担当者と打ち合わせを重ね、現場に合わせた運用を考案いただきました。本番直前にマイクをKSM9からKSM11に変更することもありましたが、迅速にご対応いただき、導入後も実際に現場に来て、実際に運用するまでを見届けていただきました。何かあったときのレスポンスが早く、解決まで迅速に動いていただいています」と語ります。懸念されていた相互電波干渉についても森下氏は「良い周波数プランを作っていただいたおかげで全く問題なく使用でき、内部干渉もなく非常に安定して使えています」と述べています。

ワイヤレス・マイク・ケア担当の林氏と仲井氏もシュア・ジャパンを信頼しており、「何かあったらすぐにShureさんに連絡します。迅速かつ丁寧でわかりやすく対応していただき、とても安心です」と話しています。

最後に森下氏は、Shureというメーカーの姿勢と今回導入したAXT Digitalについて、次のように締めくくります。「Shureは“何をしたらもっと良くなるのか”を常に考えている、高い向上心を持ったメーカーだと思います。我々のようなユーザーからの意見を聞く機会を頻繁にくれるだけでなく、その意見を実際に製品に反映してくれるのが本当に素晴らしいです。AXT Digitalは、“これがあったら便利”という機能を全部入れてくれている贅沢なシステム。ミュージカルの劇場をはじめとする多チャンネルのシステムを扱う現場に自信を持ってお薦めできる製品です」 

今回取材にご協力いただいた劇団四季の皆様。左から、市川遣吾氏、森下要氏、林拓真氏、仲井風美氏

 

劇団四季 ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

JR東日本四季劇場[秋]にてロングラン上演中

Gareth Owen Sound
https://www.garethowensound.com/
 
本公演の音響デザイナーGareth Owen氏 

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