オーディオ・ビジュアルライター 折原 一也氏 イヤホンレビュー (SE535 Special Edition)

現代的な基準で捉えられたシュア・サウンドの出発点
現代的な基準で捉えられたシュア・サウンドの出発点 - SE535 Special Edition レビュー

 ポータブル・オーディオ愛好家として誰もが通る道であるシュアの「SE535」をベースに、日本のユーザーの声を音質に反映させた「SE535 Special Edition」が登場したのは2011年のこと。発表当時、シュアが2つのサウンド基準を示す事にもなった「SE535 Special Edition」の登場はセンセーショナルな迎えられ方もしたが、本稿を書いている2017年の時点では既に6年前の出来事と、定番モデルとして順当に受け入れられている。 それでは、バランスド・アーマチュアユニットのメジャー化、そして低価格も進む2017年の規準で改めて「SE535 Special Edition」で聴き込むと、どう映るのだろうか。

 「SE535 Special Edition」で僕の2017年時点のリファレンス音源を聴き込むと、「SE535」の優れた中域の密度感を規準にしつつも、「SE535 Special Edition」ではJ-POPのボーカルに、女性の声の煌めき、男性の声には艶のあるクリアな音像を結び浮かび上がらせる。低域はタイトに結びつつもベースラインの深みと共に情報量までも克明に描写する様は「SE535」から継承する優れた表現力で、精緻という言葉がぴったりだ。 実は僕自身、今なおシュアの「SE535」(残念ながら”Special Edition”ではない)を愛用してイヤーピースやケーブルを交換し音質で遊ぶカスタムに興じているのだが、改めて「SE535 Special Edition」を聴くと、6年前の時点でシュアがその理想に極めて近い水準に到達していた事を突きつけられる。

 実際、近年日本のポータブル・オーディオ愛好家の間で高い評価を得るイヤホンには「SE535 Special Edition」を彷彿とさせる音作りも増えている。だが、「SE535 Special Edition」にしかない美点はすべての帯域の歪のなさと見通しの良さ、音の基礎体力にも長けること。ベースモデルの「SE535」は現在の基準では相当にストイックなサウンドだけに、現代的な出発点として「SE535 Special Edition」を選ぶのは、今となってはむしろ妥当な選択肢と呼べるだろう。

 

 

折原 一也(おりはら かずや)
折原 一也(おりはら かずや)

オーディオ・ビジュアルライター。 PC系版元の編集職を経て、2004年よりモノ雑誌やオーディオ・ビジュアル専門誌、WEB媒体にて映像とサウンドの専門家として活躍。2009年より音元出版主催のVGP審査員。

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