オーディオ&ビジュアルライター 野村 ケンジ氏 イヤホンレビュー (SE215)
SE215について語る – オーディオ&ビジュアルライター 野村ケンジ氏
SHUREのカナル型ヘッドホンといえば「バランスド・アーマチュア型」ドライバーのイメージが強いかもしれないが、ことエントリークラスにおいては、いまや往年の名品と呼べるE2Cをはじめ「ダイナミック型」ドライバー採用モデルがなかなかいい味を出していることも忘れてはならない。そして、その最新モデルがこの「SE215」である。
あえてダイナミック型にこだわり、しかも先代に対して振動板口径を小さくしていた意図は明白。よりSHUREらしいサウンドを発揮するためだ。
それは一聴すれば分かる。高域から低域まで歪みなくストレートな音や、低域や高域に妙な強調感のないバランスの良さは、最上位モデルであるSE535にも共通するキャラクター。解像度感の高さや高域方向への伸びやかさではさすがに差が出てくるものの、細やかなニュアンスもしっかり伝わってくるし、空間的な音の広がりも自然。最低域は伸びこそある程度であきらめているが、質感が良くボリュームも適切なので、フォーカス感がとても高い。こと解像度に関しては、SE535が超絶過ぎるだけで、SE215もかなりの優秀さを誇っている。
そして何よりも、モニター系のサウンドでありながら、モニター系にはない聴きやすさが素晴らしい。モニター系といえば、一般的には音の詳細はよく見えるが長時間聴き続けるには少々高域が鋭すぎる、というイメージがある。しかしSE215では、そういった高域頼りのチューニングを回避しつつも、音のクリアさや細やかさは見事に体現しているのだ。
まさにこれこそSHUREらしいといえるサウンドだし、僕がSHUREを使い続けている理由のひとつでもある。この音の実現に、バランスド・アーマチュア型、ダイナミック型というドライバー形式の違いは全く関係ない。素直に、1万円以下のプライスタグでこの音が手に入ることを喜びたい。