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放送音声におけるAI活用:ShureとDCA901が切り拓くライブ制作の新たな可能性  

IBC 2025では、DCA901放送用マイクロホンアレイとエージェント型AIを組み合わせたShureの取り組みを通じて、放送制作の新たな可能性をご紹介します。エンジニアが機器管理に煩わされることなく、番組の演出や表現に集中できる環境を実現します。
January 02, 2026
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IBCのエージェント型AIアクセラレーターにおいて、Shureは、放送音声の未来がインテリジェントで柔軟、かつ次世代の制作に対応可能なものであることを示しました。

放送業界において、人工知能はもはや抽象的な概念ではありません。現在では、この技術がコントロールルーム内で、制作チームを直接支える存在になりつつあります。

そうした背景のもと、IBC 2025では、ライブ制作アクセラレーターにおけるAIアシスタントエージェントの取り組みの一環として、BBC、ITN、Channel 4に加え、Shureを含む複数のテクノロジーパートナーが集まりました。このプロジェクトでは、エージェント型AIが、エンジニアやディレクターが番組の演出や表現に集中しながら、より迅速で的確な判断を行えるよう、どのように支援できるかが検証されました。

コントロールルームにおけるAI活用:構想から実用段階へ

IBCアクセラレータープログラムは、メディア業界が抱える最も差し迫った課題を、実際に現場で機能する解決策へとつなげることを目的とした、共同のイノベーションプログラムです。毎年、主要な放送局やメディア企業が解決すべき重要な課題を「チャンピオン(Champion)」として定義し、世界各地のテクノロジーベンダーや開発者、学術機関と連携しながら、実用的な概念実証を短期間で進めています。

本プログラムは、約6か月間にわたって集中的に進められる、プロジェクト主導の枠組みで運営され、理論よりも実践的な検証を重視しています。その成果は、IBCの会場で実演というかたちで公開されます。アクセラレータープログラムは、メディア、エンターテインメント、テクノロジー分野において、実現可能なイノベーションを迅速に実用へと導く、実績あるプラットフォームとして定着しています。

IBCのアクセラレーターギャラリーでは、エンジニアが、自然言語を理解し動作を実行できる最先端エージェント型AIを中核とした制作ワークフロー全体の検証を行いました。中心となったのは、音声指示を解釈し、それぞれ役割の異なる専門AIと連携しながら、リアルタイムでタスクを実行するAIオーケストレーター(複数のAIの動きを統括する役割)です。

各AIは、オーディオシステムの設定、画面表示用グラフィック、進行表の管理、コンテンツ検索、エラーチェックなど、制作工程の特定の役割を担当しました。 それらが連携することで、人の指示に即応する“デジタル制作チーム”が構成されました。

オペレーターは、複数のメーカーごとに異なるシステムを行き来したり、複雑なメニューを探したり、画面を切り替え続けたりする必要がなくなります。代わりに、音声やキーボード入力によるシンプルな指示を与えるだけで操作が可能です。  

「速報ニュースの進行表を開く」

「進行表用に、メディアにおけるAI関連のコンテンツを探す」

「次のパートの前に、下位テロップを追加する」

オーケストレーターは、こうした指示を小さな工程に分解し、適切なAIに割り振ることで、数秒以内に処理を完了させました。エンジニアやプロデューサーにとって、この取り組みは、創造的な制作のスピードに対応できる放送ワークフローの姿を、初めて具体的に示すものでした。

AI駆動による放送機器統合における、Shureの先駆的役割

12社の中で、ShureはIBCアクセラレーターに参加した企業の中で唯一、エージェント型AIを物理的な放送機器と直接連携させたパートナーでした。この取り組みは、AIがソフトウェア上の制御にとどまらず、実際の音声インフラと直接連携し始めた転換点となるものでした。

Shureは、世界初の放送向けデジタルアレイであるDCA901放送用マイクロホンアレイを制御するための、クラウドベースのオーディオエージェントを開発しました。この共同研究により、AIシステムが標準的なネットワークプロトコルを介して業務用オーディオ機器と通信し、パラメータのやり取りや設定変更を、言葉による指示でリアルタイムに行えることが実証されました。

DCA901は、従来複数のアナログマイクロホンで構成されていたシステムを、薄型の単一アレイに置き換え、DanteまたはAES67による1系統の接続で、最大8チャンネルの独立した音声を提供します。内蔵DSPがEQ、コンプレッション、ディレイ、オートミキシングをユニット内で処理し、インテリジェントな制御に対応したハードウェアプラットフォームを構成します。

高い機能性を備える一方で、その分、運用の複雑さも伴います。エージェント型AIはこうした複雑さを軽減し、専門的な操作を意識することなく、意図を伝えるだけでシステムが機能する環境を実現します。例えば:

「マイクを左側の演台に向けて、スピーチに最適な状態に調整してください。」

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AIの活用:シンプルな指示で複雑な放送音声を自在に制御

IBCでのデモでは、Shureが開発したオーディオAIエージェントが、テキストや音声による言葉の指示だけでDCA901を操作しました。エンジニアは、「ローブを円状に配置して」といったシンプルな言葉による指示で、マイクロホンアレイの収音範囲(ローブ)を調整したり、シーンに応じたプリセットの切り替えを直感的に行いました。「男性ボーカルの低域を強調して」「全チャンネルを500Hz抑えて」といった具体的な音声処理の指示にも、システムは自動的に対応しました。

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これまで複数の画面操作や細かな調整を必要としていた作業が、ほぼ瞬時に完了するようになり、エンジニアの貴重な時間を大幅に削減しました。舞台裏では、AIエージェントが一つの言葉による指示を起点に、数十もの処理を連携させて実行し、そのすべてを記録することで、運用の透明性も確保していました。

こうした仕組みのもと、エンジニアは最終的な制御を維持しながら、これまでにない俊敏さと正確さを手に入れました。このデモは、AIによるシステムが、人間のオペレーターと同等の応答性と精度で、放送用マイクロホンのハードウェアを制御した初の事例となりました。

音声設定の簡素化によって、番組表現の幅を広げる

DCA901とエージェント型の制御を組み合わせることで、制作チームによる音声の収音や管理のあり方は、新たな段階へと進みます。

1台のDCA901で、これまで複数のマイクロホンが必要だったエリアをカバーすることが可能です。 ディレクターは、カメラに映り込む機器の数を抑えながら、一貫性のある自然な音声を得ることができます。エージェント型AIにより、音声制御に関わる操作ややり取りが大幅に簡素化されます。こうした仕組みによって、エンジニアは番組の途中でも、ひとつの指示で解説者、選手、観客の反応へと収音のフォーカスを切り替えることができます。

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各変更はすべて記録され、必要に応じて元に戻すこともできるため、放送現場に求められる透明性の基準にも対応しています。このプロセスは、より迅速でシンプルになり、番組やネットワーク、会場が変わっても、同じ品質と手法を再現しやすくなります。

次なるフロンティア:放送向けインテリジェント音声の進化

IBCアクセラレータープロジェクト「ライブ制作向けAIエージェントアシスタント」が、ブロードキャスト・テック・イノベーション・アワード2025で最優秀AIイノベーション(ワークフロー部門)賞を受賞しました。IBCアクセラレーターは、エージェント型AIが、次世代の実運用における放送制作を支える重要な技術になることを示しました。この技術は、手作業による負担を軽減し、意思決定を迅速化するとともに、制作のあらゆる場面で人の創造性を中心に据えることを可能にします。

Shureにとって、このプロジェクトは、オーディオ技術を再定義してきた100年にわたる取り組みを、さらに発展させるものです。DCA901放送用アレイマイクロホンとShureのオーディオAIエージェントは、放送における次の飛躍が、単なる音質の向上だけでなく、知的な制御と柔軟な運用にあることを示しました。

インテリジェントな放送用マイクロホンアレイとAIによる連携により、エンジニアは即座に対応できる柔軟性を備え、視聴者を細部まで引き込む音声体験を提供できるようになります。 

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Dan Law
Dan is a strategic software leader at Shure focused on translating emerging technologies - particularly AI - into practical impact. His background in research and development spans diverse industries and is grounded in a doctorate in physics from Oxford University.