FRF ’22 Green Stage舞台袖対談【前編】クレア・ジャパン x シュア・ジャパン

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フジロック’22 Green Stage の音響現場から、クレア・ジャパン x シュア・ジャパン舞台袖対談が実現しました。フェスへの思いからRFマネジメントまで、ここだけのリアルな話。写真:©宇宙大使☆スター

開催中止となった2020年、国内アーティストだけで構成された2021年を経て、ようやく海外アーティストがラインナップされるようになった2022年のFUJI ROCK FESTIVAL(以下、フジロック)。政府・新潟県の新型コロナウイルス対策ガイドラインに従い、観客も我々スタッフも、フジロックの成功のためにそれぞれの立場と思いで苗場に集結しました。

初日を明日に控え、ステージ設営と最終調整に臨む7月28日の夕暮れ時、最大4万人のキャパを擁するGreen Stageを担当するSRカンパニー、株式会社クレア・ジャパンの國廣氏・早川氏の2名と、Green StageのRFコーディネーションを担当したシュア・ジャパン株式会社の井上・ミハウ、両氏による舞台袖対談が実現しました(聞き手:シュア・ジャパン株式会社/根本)。
 

【後編】は、こちらをご覧ください。
 

イントロダクション

■いつものフジロック
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(根本)クレアさんてフジロック初回から携わっていらっしゃいますけど、クレアさんにとって、フジロックってどういう存在なんですか?

(國廣&早川)クレアでいう、”フェスの代名詞” ですね。

(國廣)フェスのノウハウは、ここから始まった、みたいは感じはありますよね。フジロック創った人達が、日本のフェスの第一人者みたいな。時期的にも、これで夏フェスが始まる、って感じがします。

(根本)フジロックは、日本のロックフェスの先駆けで、今年25回目ですもんね。憧れとかあったんですか?

(國廣)僕はフェスよりはアーティストの方だったんですけど、フジロックで仕事したい、って子もいるみたいですね、入社面接で。フェスがきっかけで(音響の仕事に)興味を持って…みたいなね。

(早川)自然の中っていうのも、いわゆる都市部でやってる他のフェスとは違いますね。全部のフェスを知っているわけじゃないですけど、フジロックは音止めの時間制限も音量制限もない。この後、ヘッドライナーのプリプロで夜中も稼働しているので、2交代制で対応してますし…

(國廣)フジロックならではの対応、って感じだよね。

(井上)音量規制は、まったくゼロなんですか?

(國廣)無しですね、夜中もデシベル規制とかなく出せるし。

(根本)音量規制ないと、気づいたらスピーカー飛んでた、とか…?

(國廣)今うちが使ってるシステムだと痛手はないですけど。

(早川)昔はHigh飛んでて交換しなくちゃとか、Low破けてたとか…笑

(國廣)センターコーン飛び出てるやつもあったよね。笑

國廣 和希氏(株式会社クレア・ジャパン)営業部/チーフエンジニア


■そんなフジロック
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(根本)時間制限もないっていうことですけど、去年は海外アーティストがいなかったので、夜中の対応は無かったんですか?

(國廣)去年は朝方までのリハは無かったですけど、それでも毎晩、何かやってましたね。昨年は最終日のヘッドライナーが電気グルーヴさんで、けっこう仕込んでたし。2日目はKing Gnuさん。あれもプリプロあったんで。毎晩11時時くらいで本番終わって、そっからバラシて、12時半くらいから次のアーティストの仕込みして、夜中2時3時からリハ…みたいな感じですから。遅いときは、朝7時半でもうすぐ客入れ、くらいまでいたこともあったし、なかなかやね。笑

(根本)今年は海外アーティストが戻ってきて、気持ちの違いってありました?

(國廣)気持ちの違いというか、みんな言ってましたけど、やっぱり海外アーティスト見て機材みたらテンションあがるって。日本人アーティストとは、機材ラックのサイズ感とかも違うじゃないですか。

(早川)いろんな規模感がね。

(井上)クレアさんは海外アーティスト現場も多いじゃないですか。

(國廣)多いですねー。多いですけど、それもコロナでしばらく見てなかったですからね。「やっぱこれだよ、これ」って。

(早川)4人がかりでヨイショヨイショ、みたいな機材が来て初めて、「あぁーーー」みたいな。

(根本)機材の量も、昨年に比べて明らかに多いですよね。

(國廣)今日はほとんど持込みなんで、電源出して、って感じです。テックのエリアも、日本人アーティストよりラックがでかいからスペース食われるんで。これで、もう1バンド前のセットも組むってなったら、舞台袖の取り合いになって、ローカル卓から何も見えなくなっちゃいますね。

(根本)なるほど。「そんなフジロック」

(國廣)「そんなフジロック」、ですねー。
 

サウンドエンジニアの仕事の一部、RFマネジメント

■クレアさんにとってRFマネジメントとは?======================================

(根本)次から次へとアーティストが代わって、限られた時間の中でやるべき事がとても多いクレアさんにとって、RFマネジメントって、どういう位置づけなんでしょうか?

(國廣)そうですね、今は転がしよりイヤモニが断然多くなったんで、位置づけというよりも無いと安心してショーができないですよね。これから先は絶対に必要なんじゃないか、って思います。ショーが止まるのは大問題、管理する人は大事だなって、特にここ何年かは思いますね。

(井上)弊社は昨年からの協力ですけど、今までは、専任のRFコーディネーターがいらしたんですか?

(國廣)このフェスに関してはモニターマンが兼任してやってます、サマソニなんかはコロナ前からRF管理者を立ててやり始めてましたね。

(早川)やっぱり、正直、(モニターマンと兼任は)厳しいっすよね。

(井上)いや、きついと思いますよ。

(國廣)モニターマンの負担がね。

(早川)セットアップが終わって本番やってると次のアーティストさんが来るんですけど、その対応をしつつ、でも、「ちょっと電波が…」みたいな事になると、「…あぁぁ、ちょっと待ってください」ってなって。

(國廣)今はアーティストだけじゃなくてテックのスタッフも使うので、昔に比べて波数が断然多いんですよ。

(井上)イヤモニで10、12波なんて当たり前になってますよね。10年前はそんなに無かった。
(早川)ですね。以前はセンターボーカルだけとか、フロント3人だけがイヤモニでしたね。だいたい同じ帯域を持ってきてくれるから、まぁ、それを使い回す感じで、1つのバンドが終わったら、じゃあ次はこのバンドで、くらいな感じで何とかなってたんですけど、今では色々と種類も分かれて。

(國廣)やっぱホワイトスペースになってレンジが増えた分、調整が難しいですよね、各アーティストが持ち込んでくるから。

(井上)そうですね、それこそ、タイムスケジュールの前後の兼合いと、周波数帯域の制限が、持込機材によって違うんで。

(國廣)その調整は、(専任の)管理人がいないと、なかなか現場は難しくなってきましたね、今は。

(早川)メーカーの種類も増えた感がありますよね。以前はシュアさんかゼンハイザーさん、だいたい同じようなものを皆使っていたのが、今ではWisycom さんとか他のメーカも増えて。

(國廣)周波数プランだけ出しておけば、なんとなく割り当てていけたのが、今はそうも言ってられない。

早川 彰久氏(株式会社クレア・ジャパン)

(井上)細かい互換性の把握が必要な感じですよね。

(井上)RFに関して、うち以外でクレアさんで使っているツールとかありますか? 

(早川)今はうちは、RF Explorerっていうハンディタイプのスペアナと、Mac版のTouch Stone Proでそれを映し出して。

(國廣)それでデータ取ったやつをWWBに入れ込んで。

(早川)フェスっていうかツアーとかでも使ってて。うちで4台くらいはあるので、会場に入った時にスキャニングして自分達のプランを確認したりとか。

(井上)うちのAXT600とかは、どう使ってますか?確かクレアさんは2台持ってますよね。

(國廣)ですね、AXT600が無い現場に(RF Explorerを)持っていく感じです。あとはシュア製品縛りの現場とか…。やっぱ電波が多い現場とか。

(早川)うちの会社だと、電波の多い現場にAXT600を渡してあげることが多いですよね。

(井上)あーなるほど。

(國廣)2台しかないから、なかなか棚に戻ってこないんですよね。笑

(根本)出ずっぱり、みたいな。

(國廣)そう、出ずっぱりなんで。

(早川)今回はシュアさん入ってますけど、自分達で(RFマネジメント)やらなきゃいけない状況だったら、きっと持ってきてスキャンしてたと思います。もっと(台数)増やしてほしいとは思うんですけど…。AXT600 を持っていけなかったら、「アレ」でスキャンできるじゃないですか?

(井上)受信機で、できますね。

(早川)そうそう、受信機でもスキャンできるので、ここからここまでの帯域をスキャンして入れ込んで…を繰り返して対応したり、ってこともあります。まぁ、自分達の為にやっておく、っていう感じではありますけど。

(井上)受信機でのスキャンはデータとしては少し雑さが残るんで、機種によっては「Yes」か「No」くらいの判断になっちゃいますけど、無いよりかは良いですよ。

(早川)そうですよね。
 

■シュアのRFマネジメント
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(根本)井上さんにとってのRFマネジメントって、どうですか? こだわりとかあったら教えてください。

(井上)現場ではこうやってますよ、っていう説明は、さっきお2人にさせていただきました。今回みたいなフェスだと、どちらかというと大事なのは、「事前のプラン」の方ですよね。現場で問題なければモニタリングして状況を監視しているだけで。事前のプランとしては、一番の理想からスタートしますね。朝一から夜中まで、ずーっと(ワイヤレスの)電源入れていいよ、っていうのが最優先。それが皆さん(音響スタッフさん)が一番楽になるので。間違って飛ばしちゃっった、みたいな事がおこったとしても。

(早川)あー、それが1番こわいですよね。

(井上)そうですね。それでも大丈夫、っていうプランにします。

(國廣)そういった間違いをなくすために、そのアーティストの出演前からしか電源入れないでくれって言われる現場も少なくないので、そうなると事前のチェックができないんですよね。ローカルで担当していると、早く(乗り込みエンジニアさんに)渡してあげたい、っていう気持ちがあるんで。

(根本)いつでも全チャンネル電源入れられるようなプラン、っていうのが、井上さんの “信条” みたいなものなんですかね。

(井上)そうですね。いつ、誰からどんなリクエストがきても、「どうぞ」 って言えるように。そうすると、1日あたり合計70~80波くらいになっちゃうんですけどね。今回は、ワイヤレスの帯域の運が良くて。

※最終的には、Day-1:64ch / Day-2:76ch / Day-3:90chで、合計230chのRFを管理しました。

(早川)良いですよね。ちょうど、こういう感じで、(帯域が)高い低い、高い低いの繰り返しで。

(國廣)同じ帯域で被っちゃうと、難しくなりますよね。

(井上)帯域が被った上に、スカパラさんみたいにワイヤレス多チャンネル使用のアーティストさんが真ん中にポッと入ると、結構きついんですけどね。今回は、24時間全部飛ばせるプランを組めました。

(根本)うちはグローバル企業なんで、海外の現場の話もよく耳にするんですよね。そうすると、欧米ではRFコーディネーターとかRF担当するポジションがしっかり確立されているような印象を受けるんですけど。ミハウさん、ヨーロッパはどんな感じなんですか?

(ミハウ)RFコーディネーターの人数自体は、決して多くはないです。あとは、日本と同じで、RFの担当者をつけるだけの予算があれば。

(根本)そうなんですね。仕事自体は、変わらない感じ?

(ミハウ)ワークフローは大体同じです。本番の1~2週間前にプランを作って、現場入ったらセットアップしてスキャンして。ヨーロッパは使える帯域が広いのですが、日本は電波法とかその他のルールがしっかり定められていることもあって、RFの環境は厳しい。でも、仕事は楽に進むことが多いです。

(根本)それは、どういう意味で?

(ミハウ)日本のスタッフの皆さんは、事前の打ち合わせの内容やルールをちゃんと守ります。変更があれば、ちゃんと伝えてくれる。だから、当日現場に入って、大変な思いをすることは少ないかもしれない。

(根本)なるほど…。ミハウさんもシュア・ジャパンのエンジニアとしてオンサイトサポートに入っていますけど、1番大事にしていることってなんですか?

(ミハウ)僕も、事前のプランニングと、あとは機材の準備をしっかりとすることが大事だと思っています。使う機材をちゃんとリストアップしてナンバリングして、スペアも持っていく。

(根本)確かに。ミハウさんは、展示会に持っていく機材ですら、ラックやプラケにきっちり内容物を記載してくれたりしますもんね。あれって、箱開ける方からすると、現場ですごく助かりました。

(ミハウ)だから、“準備” が大事なんです。
 

WWB6(Wireless Workbench 6)

■“混在プラン” で威力を発揮するWWB6
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(根本)シュアのRFマネジメントを語るうえで外せないのがWWB6なんですが、クレアさんでの印象はどうでしょう。

(早川)WWBで何が一番すごいかっていうと、“他のメーカーとの混在プラン”、ができるのが。他メーカーの情報も予め入っているのが、ありがたいというか。

(井上)そうですね。そこがやっぱり、一番のメリットなのかな、と思います。

(早川)他社のだと、基本的にはそのメーカーだけとか、自分で情報を入れないといけないとか。あとは、操作がわかりづらいところもあったりとか…もちろん、使ってたら使いやすくなるらしいんですけど。(WWBは)パッと見たときに、「あ、ここでコレだね」「ここで操作して、こうか」っていうのが分かりやすいうえに、置きデータ、って呼べばいいんですかね、最初から製品プロファイルがあるので…。

(井上)えぇ、プリセットで一部の製品情報が入ってますね。他社混在プランと、ユーザーインターフェース。実践で使う方にとって1番の特長は、やはりこの2つですかね。他社のRF管理ソフトは基本的に混在プランを組みにくいものが多いですけど、実際の現場は混在がスタンダードですから。

(根本)さきほど早川さんも、昔にくらべてメーカーの種類も増えてきた、っておっしゃってましたしね。井上さんは、WWB立ち上げたら一番最初になにやるんですか?

(井上)一番最初は、リストアップですね。自社製品もですけど、Sennheiser、Wisycomなど使う製品の正しいプロファイル設定を状況に合わせて調整して、それをリストアップすることから。で、計算の方は、いきなり計算とかは全然しないので。今は1.2GHz帯もありますし、ホワイトスペース帯の幅は470MHzから244メガあるんですけど、もちろん会場ごとに使えるチャンネルは異なります。で、今回みたいに送信アンテナが乱立するようなときは、そこの相互変調歪みも見るんですよ。「あ、ここはハンドに当たらないな」っていうのを見てからホワイトスペースのインクルージョンを作っていく。最後に自分の目で全体マップを見てから、カリキュレートのボタンを押す、って感じです。

・・・一同無言・・・

(井上)…あ、でもそれは少しマニアックなやり方かもしれないですけど。

(早川)僕の場合は、少なくとも、イヤモニとハンドを分ける、くらいのレベルの事はやります。

(國廣)あー、早川、それやるよね。

(早川)はい。ここはイヤモニ帯域、ここはハンド帯域、絶対に混在させない、ってやってます。(周波数プラン組むのが)厳しいと、混在させる人もいるんですけど、それやっちゃうと、どっちかに、特にハンドの方に(干渉が)来るんで、それは頑張って避けるようにしてます。

(井上)そうですね。あとはハンドとヘッドセット、イヤモニの受信機、っていうのが一番(距離的に)近くなるんで、マイク(送信機)の歪みが、どんな動きをされても絶対にイヤモニに入らないように、ってのは120%確実に。あとは、そこまで近づくことはないので。

(根本)トラブルを寄せ付けないために、あらゆる「想定」が必要なんですね。

 

クレア・ジャパン x シュア・ジャパン Green Stage舞台袖対談【前編】 終わり

 

プレスリリース「SHURE、FUJI ROCK FESTIVAL’22 のメインステージに機材・技術協力」はこちら

 

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國廣 和希 氏 株式会社クレア・ジャパン 営業部
2003年、同社入社
日本を代表するような実力派アーティストからヒューマンビートボックスなど、多岐にわたる音楽のFOH, Monitor を担当。持前の細やかな気配りを活かし、営業部としての顔も見せる。
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早川 彰久 氏 株式会社クレア・ジャパン PA事業部
2009年、同社入社。
ファン層の厚い国民的人気のグループや、ドラマ/CMでも馴染みのある楽曲を手掛けるアーティストのMonitorなどを担当。年中動くツアーも笑顔で精力的につとめあげる。
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【後編】:現場につきもののLED照明や電飾などからのノイズ対応は? 現場にも環境にも優しいリチウムイオン充電池は、若手音響エンジニアにも嬉しい選択肢だった、等、話はどんどん盛り上がり、インタビューはついに1時間超えに…! 舞台袖対談【後編】も、お見逃しなく!!


【後編】は、こちらをご覧ください。

 

INDEX
Shure製品参照
Wireless Workbench 6
AXT DIGITAL

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sai@shure.co.jp

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