映像の音声録音

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今回は、TVやフィルムのプロ・ロケーション・オーディオオペレーターを長年務めるディーン・マイルズ(Dean Miles)氏に単独で録画作業を行うカメラオペレーターを対象に、視覚イメージに適したサウンドスケープ制作のためのサウンド要素の重要性について語っていただきました。

多くのビデオグラファーや新進フィルムメーカーは、音声録音は映像と同様に、制作・編集の中で重要である、と考えています。視聴者は画像の悪さよりも音の悪さに不快感を覚えるものである、ということは専門家たちも認めているのです。確かに、照明の当て方の悪い映像というものは、その受け止め方も人によって異なりますが、サウンドが悪いシーンには誰もが苛立ちを感じるものです。

そこで、TVやフィルムのプロ・ロケーション・オーディオオペレーターを長年務めるディーン・マイルズ(Dean Miles)氏にアドバイスをお願いしました。彼の専門は野外録音(たとえば中米の大自然の中など)です。今回は、単独で録画作業を行うカメラオペレーターを対象に、視覚イメージに適したサウンドスケープ制作のためのサウンド要素の重要性について語っていただきました。

グアテマラでShure UR3およびVP89S(Rycoteウインドシールドを使用)を準備するディーン氏

 

サウンド要素とは?

サウンド要素とは製作過程で録音された音の構成要素のことであり、これを編集することで豊かなステレオミックスを生み出します。

現場で録音するときは、編集時にステレオミックスを作成するために様々なサウンド要素を録音する必要があります。これには会話、サポートアンビエンス、室内音、環境音などが含まれます。

サウンドミキシングを理解するためには、まず視覚イメージと同じようにサウンドにも深みがあることを覚えておいてください。たとえば、ある写真の中に写っているすべての物に完璧なフォーカスが向けられていたら、その写真のイメージ要素それぞれが見ている人の注意をひきつけてしまいますよね。しかしフィールドに僅かな深みがあって、重要な被写体にのみフォーカスが当てられている場合、イメージに厚みが生まれ、様々な視覚要素を引き離すことができるわけです。つまり、見ている人の注意を特定の場所に導くことができるということです。サウンドにも同じことが言えます。

ステレオミックスにおけるサウンドのレイヤーを理解するために、インタビューを例に、視覚とサウンドについて細かく見ていきましょう。

一羽の鳥。しかし、レイヤーをよく表している。

 

インタビューを撮影するときは、視聴者の注意をタレントに向けさせるよう、タレントにシャープなフォーカスを当て、背景から引き離します。サウンドでも同じことです。会話は通常、最も音量の高いサウンド要素としてミックスされ、これを中心にパンすることで、クリアでシャープな会話が視聴者の注意を引きます。つまり、会話にフォーカスが当てられたということです。

このシーンにおける次のレイヤーは、通常、主要な被写体から僅かに逸れた周りの物体、たとえば家具、アート、ランプといった要素です。これらの視覚要素は背景を構成すると共に、フォーカスされたイメージに視覚的な深みを与えます。サポートアンビエンスもこれと同様です。会話ほどの音量を与えず、少し幅広くパンします。何の音かはわかるものの、リスニングのフォーカスにはならない程度、つまり会話をサポートしてくれるわけです。

3つ目のレイヤーは、背景の奥深く、あるいはイメージの一番端にあるようなもの、大抵はフォーカスの範囲外になるものです。そこにある必要はないけれど、テクスチャーと豊かさを生み出す―注意は引かないけれどシーンに深みを与える存在です。これはステレオミックスの環境アンビエンスに当てはまります。ほとんど耳に残らないようなその場の雑音であり、ステレオミックスで左右に大きく引き離すようパン(フルステレオ)します。環境音がなくてもミックス自体は成り立ちますが、写真と同じく、深みと豊かさに違いが出ます。それでも、誰かが指摘しない限り、環境音のトラックに気づく人はほとんどいないでしょう。

こうして必要なすべてのサウンド要素を揃えた上でミキシングを始め、次のようにレイヤーを行います。

  • 最初に処理すべき要素は会話です。始めから終わりまですべての会話トラックを調整しながら聴き、すべてのレベルが一定になるようにします。会話はすべて中心にパンし、通常はミックス内で最も音量の高いサウンド要素となります。
  • サポートアンビエンスは室内音および同録のミックスです。 少し広めにパンして、会話ほどの音量はないため視聴者の注意を完全に引くことはありません。
  • 環境音は左右に引き離してパンします。場所の空気感を醸し出し、サウンドの連続性を生み出します。
  • 最後に、音楽が使われている場合はサポートアンビエンスよりも少し広めにパンし、ミックスに適した音量に調整します。音楽の音量を高くして視聴者の注意を引くこともあるでしょうし、会話と競合しないよう音量を抑えることもあるでしょう。

 

撮影中にサウンド要素を収録する
 

 

会話の録音

まず、最も重要なサウンド録音対象は会話です。これにはカメラマウントマイク、ラベリア、ハンドヘルドマイクなどを使用します。会話を録音するマイクすべてに共通するきわめて重要な点として、モノラルであるということが挙げられます。すべての会話はモノラルで録音してください!会話はステレオで録音したほうがいいのでは?と思われるかもしれませんが、それは間違いです。ステレオ録音した会話はミックスで不自然に聞こえてしまい、モノラルで録音された会話とミックスしてもうまくいきません。

 

サポートアンビエンスの録音

これは同録時に録音されるサウンドです。できる限り明確に録音しなければなりません。ここでは、サポートアンビエンスのトラックの音質を高めるヒントをいくつかご紹介します。

  • 物音を立てないこと!固定カメラで録画/録音を開始した後にカメラバッグをガサガサいわせたりしないように気をつけましょう。ファスナーやマジックテープの音も不快なものです。
  • 喋らないこと!Bリールの撮影において私語は厳禁です。アンビエントが無駄になり、カメラオペレーターやディレクターの大目玉を食らう最大の理由となります。口は開かないでおきましょう!
  • 自分の周りのアンビエンスに気を配りましょう。撮影内容にそぐわない音がないか、耳を澄ましてください。背景で喋っている人たちの声が邪魔になったり、撮影中に過度の雑音が入ってしまったりしたら、撮り直しましょう!カメラの動きが完璧でなければ撮り直しをするのと同じです。
  • アンビエンスがシーンに合っているかどうか確かめましょう。ロングレンズで撮ったクローズアップと4.5m先で録音したサウンドとがかみ合っていない、といった問題は頻繁に起こります。ロングレンズでのショットが終了した後、カメラマイクで同じ位置のアンビエンスを15秒ほど録音しましょう。こうすれば、編集の際に入れ替えることができます。
  • シーンに特定の音が必要な場合、使用可能な音が用意できていることを確認しましょう。特定の音が必要なBリール(ゴルフボールを置いている人へのクローズアップなど)を撮影している場合、そのサウンドが使用可能であることを確認してください。このような特定のサポートアンビエンス音をポストプロダクションで再現することは、不可能ではないにしても、きわめて難しいのです。
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室内音の録音

室内音とは会話のない状態でのアンビエンス録音で、スムーズな音声編集には欠かせません。室内音を録音する最良のタイミングは会話の録音が終了した直後です。これで会話中と変わらない室内音を録音することができます。録音の際には、まったく同じ位置で同じマイクを使用し、録音すること。例えばインタビュー終了後、全員にそのまま静かにそこにいてもらい、フレームを広げた状態で録音します。これで編集中に室内音の録音を簡単に探せるようになります。録音を開始し、「30秒間の室内音」と言葉を入れることでトラックを識別します。その後で30秒以上の室内音を録音します。

すべての撮影が終了した後で、まとめて室内音を録らないようにしてください。同じ室内音にならないばかりか、大抵は録ること自体を忘れてしまって、帰り道の車の中で思い出すことになるのがオチです。

 

環境アンビエンス音の録音

環境アンビエンス音は、サウンドミックス全体を繋ぎとめて落ち着かせるアンカーのような存在です。プロダクションが終了したステレオミックス全体に対し、最後に加えます。このサウンド要素の録音に時間を費やすぐらいならもっと豪華なシーンを撮る時間に使いたい、と思うかもしれませんが、環境音はサウンド要素として非常に重要なのです。

このアンビエンストラックは撮影とは別に録音してください。カメラマウントマイクか、iOSデバイスで手軽に高品質なステレオ録音ができるMV88などを使用してサウンドのみを録音します。ここで録音するのは、深みを与えるための背景音だということに留意してください。このサウンドは「フォーカス範囲外」だということを覚えておくように。

たとえばゴルフコースでの撮影なら、環境アンビエンス音要素を録音するには、あまりに特定的な音(あるいは「フォーカス内」の音)から離れる必要があります。騒音が激しいクラブハウス、大声で話すゴルファーたち、機器を使用してコースメンテナンスを行うスタッフなどがその例でしょう。録音の際にはこのような音源から離れ、ゴルフコース内の静かな場所へと移動することが大切です。最短でも2分間は録音してください。

私自身は、時間を節約してセットに長くいられるよう、オーディオレコーダーを離れた場所に置いたままにして撮影中に環境音要素を録音するようにしています。少なくとも15分間は録音するようにしています。撮影の一日の終わりに、環境音の使用可能な部分をつなげて2分間のクリーンなトラックにまとめます。

 

仕上げ

カメラクルーが自分一人だけの場合、必要なサウンド要素全てをひとりで収録する責任があります。さもないと、編集の際思ったとおりの美しいミックスを作るために必要な要素が足りなくなってしまいます。

カメラオペレーターのみなさん、素晴らしい音声こそがビデオの仕上がりを決定します。必要なサウンド要素を適切に集め、その録音に時間をかけるか否かで、プロジェクトの品質には大きく変わってくるでしょう。最終的なプロダクションの評価は、すべてのパーツの総合評価です。サウンドがアマチュアレベルなら、プロダクションもアマチュアレベルとみなされてしまいます。

ディーン氏が使用するShure製品
 

「私はVP89 shotgunsの全シリーズを常に持ち歩いています。個人的にファンなんです。VP89シリーズは柔軟性があり、困難な状況においても対応力があると思っています。

それからUR series wireless systemsも持ち歩いています。とにかく堅牢で、使いやすいのが嬉しいですね。このシステムならドロップアウトの心配はまったくありません。とにかく安定しているので、今ではワイヤレスブームも使用していますよ!こうして考えてみると、私はUR3とUR5の安定性を心から信頼しているので、シーンにかかわらず、あらゆるサウンド録音でShureの製品を使用していますね。

一緒に仕事をするDSLRユーザーたちには、私が常に持ち歩いて使用しているVP83Fカメラマイクを勧めています。唯一のレコーダー内蔵マイクなので、DSLRで常に問題になるヒス音の心配もありません。DSLRオペレーターにとっては、まさにこれまでの歴史を覆す一品ですね。」

 

さらに詳しい情報をお求めの方は?

オンライン3コース、著書2冊、ビデオ音声に関するiBook1作の著者であるディーン・マイルズ氏の作品検索、または彼とそのパートナーであるスコット・マクドナルド(Scot McDonald)氏についての詳細情報はThe Location Crewをご覧ください。
Shureの無料Audio Systems Guide for Video and Film Productionもぜひご覧ください。

 

 

 

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