Shure 開発者インタビュー  ~ GLX-Dデジタルワイヤレスシステムの誕生 ~

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スマートな充電性能。有線レベルの音質。Shure初のギターペダル型受信機はさらにチューナー機能も内蔵。Shureの新製品GLX-D デジタルワイヤレスシステムは、ユーザーが求める新機能が満載です。そこで、この新製品とその注目の詳細について、ShureのMike Nagel(マイク・ネゲル)とErik Vaveris(エリック・ヴァヴェリス)に話を聞きました。

 

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スマートな充電性能。有線レベルの音質。Shure初のギターペダル型受信機はさらにチューナー機能も内蔵。Shureの新製品GLX-D デジタルワイヤレスシステムは、ユーザーが求める新機能が満載です。そこで、この新製品とその注目の詳細について、ShureのMike Nagel(マイク・ネゲル)とErik Vaveris(エリック・ヴァヴェリス)に話を聞きました。

 

始まり

Allison Wolcott (インタビュアー:アリソン・ウォルコット、以下アリソン):

GLX-D ほど革新的で顧客フォーカスされた製品は、短期間で出来上がるものではありませんよね。このプロジェクトの当初のゴールはどのようなものでしたか?そしてこれほどのプロジェクトの場合、開発プロセスとはどのように始まって、どうやったら「完了した」と決定できるのでしょうか?

Mike Nagel (マイク・ネゲル、以下マイク)

移動の多いミュージシャン向けに理想的なワイヤレスシステムを開発したい、というのが始まりでしたね。自分たちでサウンドを創りあげる人たちにとって、設定や使用が簡単で、サウンドの質は高く、そしてShureというブランドに求められる素晴らしいワイヤレスパフォーマンスを提供できる、そんなシステムを開発したかったのです。Shureはワイヤレスマイクロホンの市場において長い歴史を培ってきましたから、ユーザーが何を求めているかについてはよく理解しています。その知識が、GLX-Dという製品の方向性を決定付けました。

Erik Vaveris (エリック・ヴァヴェリス、以下エリック)

ここ数年、Shureのワイヤレステクノロジーとデジタル音質は飛躍的に向上し、そして電源管理もスマートな充電性能によって大幅に改善されていて、このような利点のすべてを1つにして、マイクが述べたような顧客層に提供したいと考えていました。そこでまず、私たちはお客さまがどのようにワイヤレスシステムを使用しているか、彼らのエクスペリエンスをいかに向上できるかを深く調べ、どこに機会があるかを見極めるよう努めたのです。そこからGLX-Dが含むべき機能について、決定を始めました。

アリソン 新しいワイヤレスシステムを開発するにあたって、テストプロセスにはどのようなことが含まれるのでしょうか?

マイク たとえば使いやすさについてのテストはどう行うか、ということですか?まずミュージシャンたちに試用してもらって、どこが良くてどこに問題があるか確かめます。社内でも、自身がミュージシャンであるという社員たちにテストしてもらいます。そして、ユーザーがワイヤレスの問題を感じないほど直感的であると確認できるまで、微調整を行います。私たちは今回、ユーザーにRFコーディネーターのような知識がなかったとしても、すべての調整が自動で行われるシステムを目指していましたし、音質もユーザーが期待するレベルを下回るわけにはいきませんでしたから、このようにテストを重ね続けた結果として、GLX-Dはまさに有線レベルのサウンドだとユーザーから感想を頂いていることは、特に嬉しく感じますね。

 

スマートな充電性能の利点

アリソン GLX-Dは、カスタムインテリジェントリチウムイオン電池により、これまでに例のない充電性能を備えています。その他にも、コンセント、車内、あるいはUSB充電器に接続した送信機の充電、USBドックの使用、受信機に内蔵の充電ポートの使用など複数の充電オプションがあります。どの電源オプションを搭載するかは、どうやって決定したのですか?

エリック GLX-Dには、AXTワイヤレス・マネジメント・ネットワークのワイヤレスマイクロホンと同一の、Shureが草分けとなった充電テクノロジーが備えられています。このテクノロジーと同一のバッテリケミストリーとインテリジェント電気回路構成が、セルの状態を管理して精確なランタイム情報を提供します。

まず第一に、充電池には経済的そして環境的利点があります。製品寿命期間中に節約できる金額は莫大なものです。週に何度かワイヤレスシステムを使用するという場合、単三形アルカリ乾電池を使用していると最終的には大変な額のコストがかかります。ほんの2~3年間のうちに、ワイヤレスシステム自体の価格よりも電池のほうによっぽどコストがかかってしまいます。ですから充電性能のあるGLX-Dは、短期間でその価値を証明できるといえるでしょう。それに、このテクノロジーによりアルカリ乾電池を廃棄する必要もなくなります。実際、当社のユーザーの中には経済的利益よりもまずその環境的な利点から充電池に乗り換えている方が多くいらっしゃいます。

私たちにとっての課題は、これらすべての利点を、ミュージシャンが自信を持って使用できるレベルにまでまとめ上げることでした。経済的利益や環境的な利点を理解するのは簡単ですが、結局のところ、現場で機能しなければ意味がありません。充電式にすることで人々が扱いきれないタスクを増やすようでは意味がないのです。そこで、まず3時間のフル充電で16時間継続使用が可能な電池を搭載しました。これだけで充電を思い出すこともなく多数のライブやリハーサルをこなすことが可能になります。さらに、両方の送信機にUSBポートを搭載しています。そのため電池を送信機に入れた場合、送信機をUSB電源に接続することが可能になります。これで簡単に車内充電やその他のオプションを使用することができます。

もう1つの便利な機能は、受信機(GLXD4)に搭載したスロットです。これにより、ライブが始まる直前に簡単に充電地を入れることができるというわけです。15分間の充電で90分間の連続使用が可能、つまり最初のセットを終了し、さらに少しの余裕があまる程度をカバーできます。また、ご希望に応じて追加の電池を購入することも可能です。電池は1本から購入可能で、これによりシステムを使用中に受信機内で1本を充電、そしてもう1本を予備として用意しておくことができます。基本的に、事前の充電を忘れる心配がなくなるわけです。

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充電池の使用に信頼感を持っていただけるよう、充電残り時間を時間と分の両方で表示する機能も搭載しています。これまでは残り時間はどのくらいかを推測する場が多くあったと思いますが、この新機能により、ディスプレイを見て「バーが2本残っているということは、きっとライブが終了するまで足りるってことだと思うけど。どうかな?」などと心配する必要はもうありません。GLX-Dでは残り時間を明確に時間と分で表示するため、電池を取り替えたり、または充電するタイミングを正確に予定できます。

まとめると、まず連続使用時間が元来長いため充電池の使用による典型的な不安はほとんど解決され、さらにステータス情報の正確さが安心感を高めます。また充電方法が多岐にわたることでこれもさらなる安心感につながります。そのためユーザーには充電性能に対して信頼感を持って使用していただけるということですね。

アリソン 車内充電できるのは特に嬉しいですね。

エリック それはマイクが思いついたんですよ。

マイク 充電式に移行するにあたってユーザーにさらに安心感をもってもらえるよう、もう1つオプションを加えたかったんです。もし使用する必要があるなら、その準備はできていますよ、ということですね。GLX-Dについてのフィードバックを頂くと、最もコメントされるのが音質と充電性能なので、この2つの点は皆さんに一番喜んでいただけているようです。

 

Shure初のギターペダル型受信機

アリソン GLX-DワイヤレスにはShure初のギターペダル型受信機が含まれています。これを開発しようと思い立ったのはなぜですか?また、ギターワイヤレスボディパック型に対してシステムの利点は何でしょうか?

マイク ペダルを使用するギタリストの方々から「すでに使用しているフロア環境の中に受信機を統合できたらいいと思う」というご意見を頂いたんです。そこで、受信機を従来のペダルボードから電源を取れるよう設計し、小さいフォームファクタで持ち運びも簡単にしました。アンテナも頑丈でロープロファイルなため、ペダルを踏むときも心配する必要がありません。ディスプレイも大型化したため、床においてあっても見やすいデザインです。そんな微妙な違いにより、きわめてユーザーフレンドリーになっています。

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それに加えて、ギタリストにとってはこれ1つで十分といえるチューナーを内蔵しました。きわめて精確で、ミュージシャンたちによって完全にテストされており、フルカスタマイズが可能なため、ストロボ式や針式チューナーとは異なり、参照ピッチの調整や多様な方法でのチューニングが可能です。パネルデザインチームの実質半数は、ギタリストです。実際にチューナーを作る仕事の大半を任されたエンジニアは、彼自身が素晴らしいギタリスト/パフォーマーであり、ペダル型受信機のこの性能について顧客のニーズに応えるために特にデザインとテストにこだわってくれました。チーム全体がこの製品に本当に心から関わってくれたのが伝わる製品になっています。

エリック 市場には他のギターペダル型受信機が出回っていますが、私たちが製品を製造するにあたっては、人々がShure製品に求める耐久性をお届けすることがとても大切です。その結果、当社のギターペダル型受信機はまるで戦車のように強い設計のメタル製で本当に頑丈な製品となりました。それからチューナーについてですが、私たちは常にギターチューナーをワイヤレスシステムに統合したいと考えていました。信号はすでにデジタルなわけですから特にそれは意識していたのですが、製品化するならばただの後付けではなく本当に機能する素晴らしいチューナーでなくてはなりません。もしユーザーが私たちのチューナーに加えてもう1つチューナーを使用しなくてはならないとしたら、それはつまり、十分に優れたチューナーではないという証拠です。開発チームには多数のギタリスト達が参加していたこともあって、これについては特に熱が入り、とても活気ある製作現場となりました。私自身もベースでこれをテストしたぐらいです。一日中でもプレイしていたくなるほど良い仕上がりでしたよ。

 

心配いらずの周波数管理

アリソン LINKFREQ は新たな自動周波数マネージメントテクノロジーで、最高のオーディオ音質と明瞭な周波数を提供するために設計されています。いったい何が新しいのか?どんな仕組みになっているのか、簡単な言葉で説明してもらえますか?

エリック これについてはマイクが触れましたが、私たちが開発を始めたとき、重要なゴールの1つは設定と使用が簡単なシステムを作るということでした。そこで、ワイヤレステクノロジーをGLX-Dに実装するにあたって多くの機能が自動で動作するよう開発し、顧客が考え込む必要がないように設定しました。

このワイヤレスシステムを使用するには、壁のコンセントに電源を差込み、充電池を送信機に入れて、電源を入れる、これだけでシステムの準備は完了となるわけです。送信機と受信機は、両方のスイッチがオンになっていれば自動的にお互いを検出。複数のシステムをお使いの場合は、ボタンを1つ押せば正しいシステム同士がペアリングしたか確認できます。1つのシステムを初めて使う場合は、受信機の各チャンネルに周波数とバックアップ周波数が割り当てられるよう、受信機が周囲の環境を査定して最も適した周波数に自動的に設定を行います。また送信機と受信機はリレーションシップを自動的に確立するため、受信機が環境査定後にどのような動作を行っても、送信機はこれを追跡することができます。

ユーザーがシステムの電源を入れるだけで、これらすべてが自動的に実行されます。もし複数のシステムを同時に使用するならいくらかの調整が必要になりますが、機能セットを使用すればこれもきわめて簡単に実行できます。しかも、ほとんどの場合はこれも必要ありません。ただ電源を入れて、ギター、ミキサー、その他何でも信号チェーンの次に該当する機材に接続するだけで、GLX-Dはユーザーに素晴らしいオーディオ音質をお届けできる、私たちにとっても本当にエキサイティングな製品に仕上がっています。

マイク たとえRF問題が発生したとしても、受信機がシームレスにバックグラウンド周波数に切り替えて、ユーザーの明瞭な周波数に中断がないように対処します。これも自動的に行われるため、ユーザーが心配する必要はありません。

アリソン これほどのレベルのワイヤレス製品を開発するにあたっては、何か困難な課題もあったのではないですか?

エリック 世界中の人々が当社のワイヤレスシステムを使用するわけですし、すべての環境を私たちがコントロールすることはもちろん不可能です。ですから、予測の利かない世界に対していかに頑強で信頼性のある製品を開発できるかということが焦点になるのです。だからこそ、GLX-Dは継続的に環境を分析し、パフォーマンス中に変化があれば、ユーザーの干渉なしにシームレスに周波数を切り替えるよう設計されているのです。

 

おわりに

アリソン 製品が発表された今、顧客の皆さんがステージでこれを体験していることについてどのように感じていますか?

マイク 本当にエキサイティングです。システムを使用しているライブにもいくつも行きましたし、紙の上のコンセプトスケッチだったものが今やステージで音を出していて、お客さんがそのパフォーマンスを楽しんでいるのを見るのは、とても素晴らしい気分です。それに設計どおりに動作しているから、誰もその存在に気づいていないんですよ。これが本当に嬉しいですね。

アリソン これまでにお伺いしなかったことで、GLX-Dについて人々に知っておいてもらいたいことは何かありますか?

マイク 小さなことに見えますが大事なことが1つあります。キャリングケースです。これには受信機、マイクロホン、電源に専用のスペースがあります。ライブやリハ後、簡単にパッキングできますし、何より移動中のシステムの破損を防いでくれます。良質なワイヤレスシステムの購入は、一つの投資です。ですから、これを保護するためにしっかりしたケースをご提供しています。ただしこれはギターペダル型システムには該当しません。というのも、ほとんどの方々が受信機をケースにしまうよりペダルボードにマウントする方を好むからです。しかし当社のギターシステムには、ギタリストには非常に喜ばれるプレミアムケーブルが含まれています。

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詳細については、GLX-Dの製品ページをご参照ください。

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