ライブサウンドのマイキング

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プロはライブサウンドの拡声で、どのようにアプローチしているのでしょうか?ドラマー、サウンドエンジニア、そしてライターとしても活躍するカレン・スタックポール氏にその答えを伺いました

プロはライブサウンドの拡声で、どのようにアプローチしているのでしょうか?ドラマー、サウンドエンジニア、そしてライターとしても活躍するカレン・スタックポール氏にその答えを伺いました。ちょうど彼女は「Electronic Musician」に掲載された記事の中で数名のサウンドプロにお気に入りのテクニックについて話を聞いていましたので、Shureマイクも含め、お話いただきました。

ここでは、たとえばステージのモニター用にオープンマイクを用意して、目が飛び出るようなフィードバックノイズを出してしまうといった恐ろしい状況をできるだけ避けるために、簡単な概要をご紹介したいと思います。

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まずは正しいマイクから

マイクの最適な位置を決定する最良の方法は楽器やアンプの音を聞くことです。片耳だけでマイクのモノラルピックアップをシミュレートし、近くから、そして少し離れた場所から音を聞いてみます。楽器の音はどのように広がっていきますか?自分の耳にとって楽器の音が一番良く聞こえる場所にマイクを置いてください。楽器によっては、フルレンジで音を捉えるにはマイクが2本必要となる場合もあります。

ライブの環境では、音源を分離してモニターとのフィードバックを避けるため、単一指向性マイクロホンの使用が必須となります。

モニターで問題が発生する場合は、マイクの指向性のカバー角度が狭い(ハイパーカーディオイドあるいはスーパーカーディオイド)マイクを使用するとよいでしょう。ドラムのオーバーヘッドには、より指向性の広いマイクを使用します。大抵の場合、プレーヤーの動きを邪魔しない限り、できるだけ楽器の近くにマイクを配置するようにしてください。これで周囲の残響やステージ上の他の楽器からのかぶりを最低限に抑えたサウンドを得ることができます。

 

最適なマイクは?

マイクの周波数応答性はそれぞれ異なるため、用途によって最適なマイクを使い分ける必要があります。楽器の音質を分析した上で、どのマイクが最適なのかを決定するようにしてください。

○柔らかい音の楽器には、指向性の狭いコンデンサータイプがおそらく最適でしょう。
○大音量の楽器には、高いSPLに対応するマイクを選択してください。
○高音が目立ちすぎる場合は少し温かみを加えるマイクを試してみましょう。
○中域が強い場合は、ShureのSM57 が適しています。
○低音が強い場合は、大型ダイアフラムのダイナミックタイプで低域をフルに捉えるようにしてください。

 

ギター・エレキギター

マイクをアンプスピーカーに向けるだけで良い音が拾えるエレキギターは、マイクにとって最もシンプルな楽器といえます。

ギターキャビネットのマイキングについては、2つの方法があります。まずはマイクをキャビネットとスピーカーのボイスコイル(真ん中の部分)にまっすぐ向ける方法(サウンドが一定になる)。そして、マイクをスピーカーの端に向け、ボイスコイルに対して角度をつける方法(ミッドが尖り過ぎない)です。どちらの場合も、マイクはグリルの目の前に配置します。

マイクのタイプ: 単一指向性ダイナミックマイクロホン
おすすめのShureマイク: PGA57、 SM57

 

アコースティックギター

アコースティックギターの場合、ステージサウンドが込み合っていたり音量が高すぎる場合を除き、コンデンサーマイクロホンが最適。ステージ音量が高くギターの音はモニターを通す必要がある場合は、フィードバック前のゲインを十分に得られるよう、広域のレスポンスに優れたダイナミックマイクを使用すると良いでしょう。

ギタリストがピックアップを使用している場合は、ここから直接取り入れるようにしましょう。サウンドがドライすぎで、ギタリストがアンプで多くのエフェクターやイコライザーを使用している場合は、エレキギターアンプのマイクと同じ要領でアンプをマイキングし、その音と直接送られた信号を合わせます。ギター自体をマイキングし、これを直接送られた信号とブレンドする方法でも、フルな音質が得られます。

マイクのタイプ: コンデンサーまたは単一指向性ダイナミックマイクロホン
おすすめのShure マイク: PGA81、 SM57、 KSM32

 

エレクトリックまたはアコースティックベース

ベースはPAを通して直接送信するのが標準的とされていますが、場合によって、エンジニアはベースキャビネットをマイキングすることがあります。この場合、低域をしっかりと捉えられるマイクを選ぶようにしましょう。大型ダイアフラムのダイナミックがこれに適しています。

ベースキャビネットに10インチと15インチのスピーカーが混在している場合、いくつかのオプションが考えられます。低域をより強く聞かせたい場合は、15インチスピーカーにマイクを配置します。ファンキーで弾けるようなベースプレーヤーなら、マイクを10インチスピーカーの1台に配置するか、あるいはホーンにマイクを配置して鮮やかな高域とより良好な過渡特性を得られるようにします。ダイレクトボックス(DI)はたっぷりとした低域、そしてブーンという弦の音をさらに高めるということに注意してください。そのため、マイクを配置したキャビネットからの中低域のサポートによって、よりフルなサウンドをもたらします。

マイクのタイプ: 単一指向性ダイナミックマイクロホン
おすすめのShure マイク: PGA52、 SM57、 BETA 52A

 

アコースティックアップライトベース

信号をアコースティックベースピックアップから直接入力するのが理想的ですが、ほとんどのコントラバスプレーヤー(特にジャズ系)はDIの音を好みません。そういった場合は、やはりベースをマイキングする必要があるでしょう。それでも直接入力のサウンドオプションを用意しておくのが賢明です。マイクから十分なゲインやデフィニションを得られない大音量の環境では、直接入力によりレベルを上げてミックスでベース音が生きるようにすることができるからです。

アコースティックベースの出力は通常低めであるため、マイクはできる限り近づけて配置しましょう。単一指向性マイクは音源に近すぎると近接効果(低域でのブースト)に影響を受けてしまうため、低域を少し弱める必要があるでしょう。小型のマイクロホンをテールピースやfホール、または楽器のウェスト部分のすぐ上にある突起部に止め付けることができます。弦の振動を弱めてしまうため、ブリッジには付けないでください。

マイクのタイプ: コンデンサーマイクロホン―カーディオイド楽器用およびグースネックタイプ
おすすめのShure マイク: KSM32KSM44AKSM137KSM141BETA 98H/C

 

キーボード・電子キーボード

大半のエンジニアは電子キーボードからの直接入力を好みます。キーボードのアンプからの音の方が良いという場合は、キャビネットにマイキングし(ギターアンプとSM57の例と同様)、これを直接入力信号のサウンドとブレンドします。

一般的には、クリーンなサウンドが得られる直接入力あるいはダイレクトボックスの使用がより良好な結果につながります。フェンダーローズのスーツケースピアノの場合は、サウンドを完全に引き出すため直接入力とピアノ上のスピーカーへのマイキングを試してください。

マイクのタイプ:ダイナミック楽器用マイクロホン
おすすめのShure マイク: SM57

 

グランドピアノ

グランドピアノをマイキングするのによく使用されるのは、コンデンサーマイクです。マイクのペアで高低の弦の音を捉えるのが理想的です。マイクを一本低音側の弦から数インチ離れた場所に配置し、もう一本を高音の弦側に配置します。お互いのマイクをできるだけ離すように角度を付けます。ハンマーに近づけるほど、アタックは大きくなります。ハンマーから遠ざけるほど音のトーンが柔らかくなります。

環境ノイズが高い場合は、マイクをピアノの中で固定して蓋を閉め、遮音を高めてください。また、響板にLP Clawまたは同様のマイククランプで取り付け(木に傷を付けないようフォームを使用すること)ても良いでしょう。入力が1つのみで、ピアノの音がモニターに通される場合、SM58一本を響板の穴のひとつに向けることも可能です。

マイクのタイプ: コンデンサー楽器用マイクロホン
おすすめのShure マイク: PGA81SM81KSM44A

 

アップライトピアノ

蓋を開けてマイクロホンペアで中に入れ、わずかにハンマーに向けた角度で取り付けます。これで低音と高音の両方のキーを捉えることができます。コンデンサータイプが理想的ですが、SM57も有効です。また、スイートスポットを探す時間があるなら、背面でマイキングすることもできます。マイクの観点でしっかり音を聴き取ることをお忘れなく。もう一つのアイデアとして、プレーヤーの足元部分でフロントカバーをはずし、その角度から弦をマイキングする方法もあります(これはプレーヤーがペダルや床に足をドンドン打ちつけることがない、という前提でのみ可能です)。

マイクのタイプ:コンデンサー楽器用マイクロホン、ダイナミック楽器用マイクロホン
おすすめのShure マイク:PGA81、 SM57KSM44A

 

ドラム

ドラムセットはサイズ、コンポーネント数、トーンの質、ヘッド構成などがそれぞれによって異なります。最も一般的なキットには、スネアドラム、ベースドラム、フロアタム、ラックタムが1台以上、ハイハット、ライドシンバル、クラッシュが1~2台含まれているのが標準的です。

 

スネアドラム

スネアドラムは厚みがあって且つ鮮やかな音が理想的ですが、Shure SM57はこの音を生み出すのに最適な選択といえるでしょう。BETA 58Aもスネアにはとても適しています。

マイクはプレーヤーから見て11時の方向に配置します。ハイハットトラックタムの間、ヘッドから数センチ離して、ヘッドに向けて角度を付けます。

低音をさらに捉えるには、カプセルをヘッドに近づけるような角度にします。より鮮やかなアタックを捉えるには、マイクをヘッドからもう少し離して、ドラムの中央に向けるようにします。

ファンキーな音作りのためにスナッピーからさらに響きを得るには、ボトムヘッドにマイクをもう一本追加し、スナッピーに向けて配置します。高音の伸びが良いダイナミックマイクを使用し、ボトムヘッドの位相を反転して、位相のキャンセルを防ぎます。

マイクのタイプ:ダイナミックマイクロホン
おすすめのShure マイク:PGA57、 SM57BETA 58A

 

キックドラム

パンチがあり低音が強いキックドラムサウンドは、バンド全体の音を盛り上げてくれます。キックドラムのマイキング専用にデザインされたマイクはいくつかあり、Shure Beta52®Aもその一つです。

キックドラムは通常、フロントヘッドに穴があります。マイクをドラムの中に入れることから始めてみましょう。アタックを強めるには、マイクを中でビーターに向けて近づけます。フルで丸みのあるサウンドで、アタックを弱めるには、マイクを後ろに戻し、わずかにビーターから逸らした角度に配置します。フロントヘッドに穴がない場合は、マイクをリムから5~10cm離してヘッドに向けて設置し、希望する音が捉えられるように角度を付けます。プレーヤーがドラムを叩いている間に片方の耳だけで音を良く聴いて、一番良い音だと思える場所でマイクを配置します。ドラムの中心はデッドスポットですので、マイクは置かないようにしましょう。

マイクのタイプ:キックドラムマイクロホン ― ダイナミックコンデンサー
おすすめのShure マイク: PGA52 BETA 52ABETA 91A

 

タム

ドラマーが多数のシンバルスタンドを使用している場合、タムのマイキングは難しくなりがちですが、それでもクリップオン式のタムマイクや希望する場所にとめつけられるマイクがあるため、邪魔にならない配置は可能です。マイクをドラムリムの近くに配置し、ヘッドに向けて、角度や距離を低音やアタックの好みに応じて調節します。差を大きくしたいときは、マイクをできる限り離すような角度にします。

マイクのタイプ: ダイナミックまたはコンデンサーマイクロホン
おすすめのShure マイク: PGA56SM57BETA 98AD/C

 

ハイハットとシンバル

シンバルおよびキットサウンド全体を捉えるには、オーバーヘッドマイクの使用が標準的です。またペアにするとキットの両側からの音を捉えることができます。高域と自然な過渡特性を捉えるのに優れているコンデンサーマイクは、オーバーヘッドに最適です。

オーバーヘッドが1つの場合、マイクをキットの中央上部に配置し、プレースタイルとキットの性質(静かなライドシンバル、音量の高いスネアなど)に合わせて動かして補正します。フィードバックを避けるため、オーバーヘッドをモニターに近づけないようにしてください。ハイハットを強めるには、小型ダイヤフラムコンデンサーマイクをハイハットの数センチ上に配置し、カップの真下に向けて角度をつけます。

マイクのタイプ:コンデンサーマイクロホン
おすすめのShure マイク:PGA81、 SM81

 

最後に…

ステージ楽器のマイキングはきわめて主観的に決定されるもので、エンジニアの数だけ違いがあります。それでも、標準的な会場での一般的な楽器に対するマイキングについては、ここまでで十分ご理解いただけたことと思います。

もし多様なライブサウンドのマイクについて調べる時間があれば、次のステップとして、自分のショーの前にいくつかのセレクションと配置を試してみてください。

フィードバックを避けること、そして最大限のピックアップと遮音は単一指向性マイクでのマイキングで実現するということは不変のルールです。そして、この記事は参考としてご利用いただけますが、最高の音を引き出すマイキングを最終的に決定するのはあなた自身の聴覚だということをおぼえておいてください。

 

カレン・スタックポール(Karen Stackpole)について

カレン・スタックポールは1988年にライブサウンド拡声の仕事を始め、その実績を1991年にはスタジオ作業にまで拡大しました。フリーランスとしてライブサウンドおよびスタジオエンジニア、またドラムテクニシャンとしてのプロジェクトをこなす傍ら、1997年にはモバイルレコーディング事業を行うStray Dog Recording Servicesを創設しています。カレンはSyn-Aud-ConおよびAudio Engineering Societyの会員を務め、現役のドラマー/パーカッショニストでもあります。フリーランスライターとしてElectronic MusicianおよびDRUM!Magazineの各誌にも寄稿。1999年にはExpression College for Digital Arts のSound Arts 教員としてスタジオメンテナンスコースを教授しています。
カレンおよびStray Dog Recording ServicesについてはMySpace をご覧ください。
カレンおよびElectronic Musician誌に対し、本記事への内容の参照許可を頂けたことに謝意を表します。