Dante オーディオネットワーク:その真実

2016年2月3日 Dante オーディオネットワーク:その真実

デジタル・オーディオ・プロトコル「Dante™」の存在を知らずに従来のライティング・コンソールをこれまで使用してきた方や、Danteのロゴが多数の製品についているのを見かけるようになり興味を持っていたという方、そんな皆様にDanteの魅力についてご紹介しましょう。

オーストラリアに拠点を構えるAudinate社が開発したDanteは、複数チャンネルの非圧縮デジタルオーディオをきわめて低いレイテンシーで同期できるオーディオネットワーク技術です。

同じような製品はこれまでにもありましたが、DanteはShureを含む多数のプロオーディオメーカーから認められ採用された真の実績を誇る製品です。

それではDanteに対応したShure製品の利点を早速ご紹介しましょう!

 

Danteに対応したShure製品の利点

Dante対応のShure製品は、ユーザー、インテグレーター、オーディオのプロ、コンサルタント…あらゆるタイプの方々に多くの利点をお届けします。CAT5e(またはそれ以上)のケーブル一本で複数チャンネルのオーディオ機器をネットワーク化できるため、時間と予算の大幅な削減とさまざまな機能の追加が簡単に実現するのです。

 

Danteのすばらしさの理由:

まずは機材の軽量化です。従来の銅製スネークケーブルなどは場所を取り、重くて扱いに手がかかります。もしこれが、ステージボックスとミキシングコンソールを通常のCAT5eまたはCAT6ケーブル一本で接続するだけ、となればどうでしょう?従来のオーディオケーブル用の大型コンジットも必要ありません。コンサルタントやインテグレーターたちは、状況に応じて小型のコンジットやプレナム仕様のネットワークケーブルを使用するだけで済むのです。

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労力や資材の節約につながります。一日中かけてオーディオケーブルやロジックターミナルの端末処理を行う方なら誰でも、デザインビルドのプロジェクトにおける労力とコストの大部分がそこに費やされていることをよくご存知でしょう。しかしDante対応製品ならそのほとんどを節約できます。低コストの汎用ネットワークケーブルの両端を処理するだけで、最大で512の双方向オーディオチャンネルに対応可能となります!

機能性も拡大します。Dante製品は重量、場所、労力、資材の節約を実現するだけでなく、無償ソフトウェアにより信号経路をデジタルドメインに移行することが可能です。信号分岐もブラウザベースのソフトウェアによるシンプルなマトリックスルーティングができるようになります。つまり、変圧器で分離されたハードウェアによる分岐手法は終わりを告げ、時間もかからず急な信号経路変更にも対応できるノートパソコン操作に生まれ変わるというわけです!

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さらに、Danteによるネットワーク化はアナログオーディオに典型的な問題点、たとえば他の電子機器による干渉、クロストーク、長いケーブルを走らせることによって発生する信号劣化などの解決にもつながります。

いったい何がそれほど違うのか?ShureのDante対応製品である2種類のデジタルワイヤレスシステムと世界最高峰のオートマチックミキサーを例にとって具体的な利点についてご紹介しましょう。

 

Dante + ULX-D® デジタルワイヤレスシステム(デュアル/クアッドチャンネル受信機)
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送信から受信までデジタルドメインで実行されるフルレンジのオーディオにより、ULX-DデジタルワイヤレスシステムはShureのワイヤレスシステム中で最高クラスといっても過言ではありません。ULX-Dデュアル/クアッド受信機をネットワーク上で使用すればユーザーによるコントロールとモニタリングが実現可能。ボタンを3回押すだけでシステムがネットワークの全チャンネル向けに周波数を検出し展開します。

ULX-Dの複数チャンネル受信機はどちらもDante対応でネットワーク化をシンプルにします。ユニットのリアパネルの二つのイーサネットポートのいずれかに、ネットワークケーブルを用いてDanteネットワークに接続します。ネットワークは無償のDanteコントローラソフトウェア内で受信機を「検出」し、ULX-Dチャンネルをネットワークに加えます。これでブラウザベースの外部コントロールパネルにより、簡単なルーティングとコントロールが可能になります。

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なぜポートが二つあるのか?それは追加機能が存在するためです!ShureはULX-D受信機内に二つのポートネットワークスイッチを搭載。複数ユニットのデイジーチェーン接続用に構成してShureあるいはサードパーティコントロール(一つのポートをコントロール、もう一方はDante)を実現できます。これにより複数のULX-Dシステムを汎用のコントロールシステム(AMX、Crestronなど)へ統合することが可能です。このプロセスを簡潔にするためShureは多数のコントロール・ストリングを無償で提供しています。これらを使用することで、音量、ミュート、バッテリー残量、すべてのワイヤレス操作が簡単にプログラミングできます。

ケーブル破損やネットワーク切り替えの失敗による中断時間の発生が許されないような状況においては、二つ目のポートを冗長モードとして使用することも可能です。

 

Dante + SCM820オートマチックミキサー

スピーチ用途のSCM820 8チャンネルデジタルIntelliMix®オートマチックミキサーも、ShureのDante対応製品です。Danteネットワークの接続性がオプション搭載されている本製品は、スピーチ用途向けに設計されたオートミキサーとして世界最高峰の製品です。

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SCM820は単品でもすばらしい性能を発揮しますが、Danteネットワークを使用すればその機能はさらに高まります。(パターンがわかってきましたか?)デュアルポート接続性(ULX-Dと同様)により最大12台のSCM820 Dante対応ミキサーをリンク可能、96チャンネルのオートミックスを同一のIntelliMix設定で操作しながらも、ファイナルミックスで必要とされるのは入力チャンネル1つだけという簡潔さです。

小規模の教会や学校などシンプルなミキシングのニーズに対しては、SCM820をULXD4DまたはULXD4Qワイヤレスと接続すればシームレスな素晴らしいサウンドソリューションが得られます。

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オートミキサーはパネル参加者のマイキングなどプロダクションの世界において重宝されているツールで、このような用途ではオートミキサーとメインコンソールの間にアナログ・インサートが使用されます。しかしSCM820がその威力を最大限発揮できるのは、Danteを介してデジタル操作する場合です。かさばるブレイクイン/ブレイクアウトケーブルの必要はなく、ルーティングもシンプルになります。SCM820は標準ブラウザから簡単にアクセスできるオンボードウェブGUIをホストしており、ユーザーはフロントパネルの代わりにノートパソコンやタブレットから調整を行ったり、Danteコントローラソフトウェアによりルーティングを構成することが可能です。

 

Dante + Microflex™ ワイヤレスシステム

発表以来すぐに役員室や会議室のワイヤレスマイクロホンのスタンダードとなったこのデジタルシステムは、簡単なシステム展開、暗号化、充電性、ネットワーク・アクセスシビリティによりユーザーにもインテグレーターにも愛される存在です。ネットワーク化設定向けに特化されたMicroflexワイヤレスシステム(MXW)は、アナログオーディオをオプションとしてDanteエコシステム内に完璧に適合するよう設計されています。

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MXWならばラックにせめぎあう受信機の数々も必要ありません。システムはたった一つのウォールマウントアクセスポイントでマイクロホンチャンネルを8チャンネルまでサポート。標準Wi-Fiステーションのような姿のMXWAPTの接続に必要なのはたった1本のネットワークケーブルのみです。オーディオチャンネルはDanteを介してネットワーク接続にストリームされ、ネットワーク対応のロケーションあるいは機能にすばやく簡単にルーティングされます。

インテグレーター向けに、8チャンネルまたはそれ以下のチャンネル数のシステムは充電ベースステーションの「リンク」ボタンを押すだけでネットワーク化できるようになっています。さらに多くのチャンネルカウントでもオンボードウェブGUIとDanteの無償コントローラソフトウェアにより簡単に設定することができます。またDanteデジタルオーディオをアナログオーディオに変換するにはShureのMXWANIネットワークインターフェースが活躍します。このインターフェースは個別の出力やそのヘッドホンモニタリングの機能も搭載しています。

Microflexワイヤレスはチャンネル自動選択および展開など操作がきわめて簡単なため、詳しい知識のないユーザーでもサポートなしでシステムを使用することができます。

 

終わりに

ShureのDante対応製品はプラグアンドプレイ互換、統合されたメディアおよびコントロールにより、セットアップも簡単です。Danteは最多で512のデジタルオーディオ双方向チャンネルを提供する柔軟でスケーラブルなソリューションです。低いレイテンシー、そしてハム音/グラウンドループ/長距離ケーブルによる信号劣化を排除することで音質の向上も実現。変圧器調整のスプリットを備えた高価な銅ケーブルよりも安価なDante対応製品のリーズナブルさは明らかです。Danteは展開、設置、端末処理なども簡単なため、アナログオーディオ接続と比べて労力コストの節約にもつながります。しかもソフトウェア購入の必要すらありません。

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多くの主要メーカーがDanteを採用しはじめているため、異なるメーカーのさまざまな製品がお互いに「協働」しやすくなっているのも魅力です。たとえば、Yamaha CLシリーズデジタルコンソールが同一のDanteネットワーク内にあるShure ULX-D受信機を検出し、そのコンソールディスプレイ画面上でShureチャンネルをも直接コントロールできるといった具合です。

しかし最大の利点は、複数の部屋に拡張されたオーディオ設備を一台のリモートアクセスパネルからコントロールできることでしょう。Danteネットワークを組織のITインフラに統合して中央地点から複数の機器をモニタリングおよびコントロールしたり、Wi-Fiシステムを追加してタブレット、スマートフォン、ノートパソコンといったポータブル機器を介しての同様のコントロール・アクセシビリティを得ることも可能です。

さあ、いかがですか。私のような古いタイプの人間から見ても、Dante製品はコンサルタントからインテグレーター、オペレーターまで誰にとってもより良い結果をもたらすことは明らかと言えるでしょう。設置は簡単、労力コストも節約、機能拡張、コントロールシステムの相互操作性もあり。音質を犠牲にすることなくプロオーディオとITの間にあるギャップを橋渡しする、それがDante対応製品の強さなのです。