優れた社内音響を実現したいITプロフェッショナルへのヒント

Cheryl DaProza | 2017年11月27日 優れた社内音響を実現したいITプロフェッショナルへのヒント

コミュニケーションは音声が不明瞭では成り立ちません。社内音響が不十分だと、役員室、トレーニングセンター、会議室に至るまで施設のあらゆる場所で不平や不満を引き起こします。ハードウェアの故障やユーザーによるエラーにも対処しなくてはなりませんが、IT部署が対処する不満の大半は、クリアでない不明瞭なサウンドではないでしょうか。

そこで、まずは電話会議やミーティングなど一般的な状況での「優れた音声」とはいったいどういうことか、そこから見ていきましょう。最初に誰もが考えるのは、普段話している声をそのまま伝えられれば良いのでは、ということ。つまり音源を精確にキャプチャして再現すること、それができれば優れた音声になると思いませんか?

残念ながら、実はそうではないんです。

 
優れた社内音響 vs 優れたライブミュージックサウンド

優れた音声という定義は状況や背景によって変わってきます。たとえば音楽とスピーチでは要件が全く異なります。音楽ではサウンドの忠実性が大切ですが、話し言葉における優れた音声とはわかりやすさ、つまり明瞭性が求められます。一方を強調したサウンドシステムは、もう一方にとっては問題となることはよくあるのです。

聞き手側が話し手の言葉を理解できなければミーティングや電話会議の効率性も効力も失われてしまう、という企業環境では、スピーチの明瞭性は極めて重要です。

誰でも一度は音声がクリアでない中での会話を経験したことがあるはずです。混み合ったレストラン、後ろに音楽が流れているようなうるさい場所、天井が高く残響音が多い教会での会話、などはよくある例です。ミーティングルームや会議室では、コンクリート、ガラス、ホワイトボードなどが大きな反響板となってしまい、残響音を生み出してスピーチが不明瞭になりがちです。同様に、室内の環境音が問題になる場合もあります。

スピーチの明瞭性、つまり聞き手が話し手を容易に理解できるためには、直接音(この場合、話し手の声)が不必要な環境音(空調、プロジェクターのノイズなど)と反響音(室内の残響)の両方に打ち勝つことが必要なのです。そのためには、マイクロホンなどのシステム要素の展開を最適化する方法を学ぶことが一番の有効でしょう。

 
会議用マイクロホンの基礎

極めて困難な状況の一つについて考えてみましょう。会議室内の音声を遠隔地の参加者に届ける音声/ビデオ会議の場合、大半の電話会議システムは、Skype for business、Webex、LinkedInなどのシングルマイク、コンピュータベースのソリューション、あるいは複数の地点が参加するマルチ入力システムに関わらず、デジタルオーディオコーデックを統合しているのが通常です。大半は音響エコーキャンセラ(AEC)を搭載する外部デジタル信号プロセッサ(DSP)を伴っているため、スムーズなコミュニケーションが実現できます。しかしこれらの緩和対応要素をもってしても、電話会議システムはやはり室内ノイズや残響音の問題を完全に排除することはできません。

電話会議の始めに、遠隔地の参加者に対して声の明瞭さを確認するようにしましょう。全体的な音質が響きすぎていたり、くぐもっていたり、はっきりとしない場合、これを解決する必要があります。

いくつか役立つポイントをご紹介しましょう。

 
臨界距離

まずは臨界距離というコンセプトについて。これは音源とマイクロホンの間で、直接音(話し手の声)と環境ノイズとが同じ音量レベルになる地点からマイクロホンまでの距離を指します。明瞭度を高めるには、話し手がこの臨界距離の地点よりもマイクロホンにずっと近い場所にいることがカギとなります。室内のノイズが高いほど臨界距離は短くなります。臨界距離についての詳細は、このFAQ内に記載されているShureの製品サポートチームによる説明をお読みください。

 
単一指向性のマイクロホン

不要なノイズを排除する最も効果的な方法の一つは、指向特性が単一指向性のマイクロホンを使うことです。単一指向性パターンには、カーディオイドやスーパーカーディオイドなどがあります。これらのマイクは、マイクの正面からの音には敏感ですが、背面からの音への感度は良くありません。

単一指向性マイクロホンに向かって正面から発話し、そのままゆっくりとマイクを180度回転させていくと、マイクが声を拾わなくなっていくのがよくわかるでしょう。このような設計のため、単一指向性マイクは正しい方向に設置すれば室内の残響音や振動音、空調ファンのノイズなどを抑制することが可能です。一般的には、音響的に問題が多い場所ほど極性パターンが狭いマイクを使うとよいでしょう。無指向性のマイクロホンはこのような場所ではお勧めできません。

 
マイクロホンのフォームファクタ

適切な極性パターンの次は、最も効果的なフォームファクターの選択です。明瞭性を最大限に高めるには、マイクを話し手の口元に近づけるのが理想的です。ヘッドウォーン型のマイクロホンはこれに最適ですが、人によってはこれを邪魔に感じる場合もあります。そのような時は、次に適しているのはラペルまたはラべリアと呼ばれるマイクロホンで、衣服にクリップできるタイプです。ただ残念なことに、多くの人々がマイクロホンを服につけるのを嫌がります。

すると次に出てくる選択肢は、テーブルトップのマイクロホンでしょう。これにはロープロファイルのバウンダリーマイクロホンMX395MX405およびグースネックマイクロホンMX412などがあります。バウンダリーマイクロホンに比べ、グースネックマイクロホン(カーディオイドあるいはスーパーカーディオイド)には話し手に近づけられるという利点があり、また机上にある書類のガサガサいう音などからも距離を置くことができます。フラットな固定型のバウンダリーマイクロホンの場合は、マイクがノートブックや書類で覆われていないように注意し、参加者にはテーブルに近づいて腰かけてもらう必要があります。

 

MX415 グースネックマイクロホン

 

MX395ロープロファイル・バウンダリーマイクロホン

システムデザインにおいては、直接音を最大化しながらも残響や環境ノイズは抑えたい、というのが最大の課題となります。マイクロホンの種類と極性パターンに関する基本的な知識があれば既存のシステムの音質を改善する役に立つことでしょう。このトピックについての詳細は、無料の教材ブックレット「Shure Audio Systems Guide for Meetings & Conferences(ミーティング&会議用Shureオーディオシステムガイド・英語)」を推奨します。

 
ワイヤレス会議用マイクロホンの利点

初期費用が高めになる傾向がありますが、ワイヤレスマイクロホンには大きな利点がいくつもあります。乱雑にならず、ケーブルを処理する面倒もありません。ケーブルの接続が容易でない場所でも簡単にシステムを使用できます。用途に合わせた構成のシステムはすぐに使えるよう使用可能な周波数を自動検出したり、充電式バッテリーシステム搭載で全体のコストを結果的に節約することができます。

 

充電ステーションに設置されたMicroflex Wireless送信機

Shure Microflex Wirelessなどのワイヤレスシステムは、コンパクトなボディパック型送信機でヘッドウォーンおよびラべリアの両方のマイクロホンスタイルに対応、マイクロホンを音源に近づけられるため環境音に対する直接音の比率を高めることができます。多くのグースネックおよびバウンダリーマイクロホンはワイヤレスタイプもあるため、座席構成にさらなる柔軟性を加えられます。

現代のワイヤレスの大きな利点は、ネットワークシステムを利用できることにあります。Shure Microflex WirelessシステムはAudinate製Dante™ネットワークプロトコルを活用し、企業ネットワーク上で便利なアクセス性を発揮します。

唯一の注意点はバッテリーの充電を保つことです。各ミーティングの後、参加者は送信機をシステムの充電ラックに戻す必要があります。ワイヤレスマイクロホンの便利さと音質の利点を考えれば、それほど大した苦労ではありませんが、忘れてはならない大事な注意点です。

 
新しいテーブルおよびシーリングアレイマイクロホン

社内音響では、マイクロホンシステムの使用による部屋の外観への影響をできる限り抑えたいという課題がよく挙がります。多くの組織が効果的で透明性の高いテクノロジーを導入したいが、できれば目に見えないようにしたいと希望しているのです。しかしそういった場合、これまで述べてきたマイクロホンソリューションのほとんどは望ましくないということになります。

 

MXA910シーリングアレイマイクロホンが天井に設置されている様子

MXA310テーブルアレイマイクロホンのカラーバリエーション

しかし、Microflex™ Advance™の技術開発により、ようやくその問題を解決します。Shureから新たなアレイマイクロホンの登場です!

アレイマイクロホンは複数の内部マイクロホン要素をインテリジェントDSPおよびブラウザベースのコントロールと組み合わせ、ステアラブルかつ制御可能な収音パターンを実現しています。しかもロープロファイルのテーブルおよびシーリングマイクデザインから選べるため、会議室のデザインを邪魔することがありません。

Shureは標準イーサネット接続でのDanteネットワーク機能を搭載した2つの新製品、MXA310テーブルアレイマイクロホンMXA910シーリングアレイマイクロホンを2016年に発表しました。 これらのアレイマイクロホンはソフトウェアにより複数の収音エリアの「向きを制御する」ことで明瞭性を向上し、幅広い座席構成に対応できます。

 

MXA310はロープロファイルディスクのような形状で4種類の設定可能な指向特性を提供、独自の新しい指向性『トロイドパターン』によりテーブルにつく全員の声を収音できます。ドーナツ型のトロイドパターンの素晴らしい点は、頭上のノイズを抑制しながら会議参加者の発言の明瞭性を最適化できる点にあります。MXA310は電話会議での音響エコーを抑えることも可能で、WebexやSkypeなどのシングルチャンネルシステムとの使用に効果的です。

MXA310 Shure独自の指向性『トロイドパターン』

MXA910はシーリング・マイクロホン・テクノロジーの大きな前進を体現する製品です。従来、話し手からの距離があるシーリングマイクロホンは明瞭性についてあまり効果がありませんでした。しかしMXA910は、100を超えるマイクロホンエレメントとパワフルなデジタル信号処理によってステアラブルカバレッジ技術(Steerable Coverage™:自在な収音コントロール)を実現、机上の書類のノイズなどは抑制しながら座席の配置に関わらず全ての参加者の声をキャプチャするように設定することができます。MXA910は標準シーリンググリッドにフィットするケースを同梱しており便利ですが、天井から吊り下げる方式でも使用できます。どちらの設置方法であっても室内の外観を損なうことなく優れた社内音響を実現できる製品です。

 
社内音響のもう一つのハウツー・リソース

現在、IT専門家は企業環境の中でオーディオとビデオシステムの両方の責任を担っています。最新のテクノロジーにより、小さな会議室、大型のカンファレンス会場、役員室、講堂などを含む様々な会場での企業会議に対する優れたソリューションがいくつも開発されていますが、現場のAVオペレータが基本的なマイクロホンの選択方法と展開テクニックを知っておくことで、たとえ使用しているシステムが古いものでも、不明瞭な音声に対する不平や不満を減らすことが可能になります。Shureが無料で提供しているの「Shure Audio Systems Guide for Meeting & Conferences(ミーティング&会議用Shureオーディオシステムガイド・英語)」では、組織内で極めて明瞭かつ簡単に使えるオーディオシステムを実現できるよう、他のオペレータよりも一歩先に進める知識を提供しています。

Cheryl DaProza

Cheryl DaProza

シェリルはShureのカスタマー・サービス部署での経験を積み、現在はメディア・リレーション・スペシャリストを務めています。プロのシンガーとしても、数々のトリビュートやカバー作品、さらにはシカゴの中心部でオリジナルのバンドでも活動しています。仕事と音楽の多忙な日々の合間を縫って、シェリルは読書やペットのオウムとの時間も楽しんでいます。シェリルの最もお気に入りのマイクはKSM9HSだそうです。シェリルのTwitterハンドルネームは@TheUnsungDiva.です。