SHURE

TOPページへ

TOPページへ

お問い合わせ

お問い合わせ

z

RICOH × Shure 特別対談

企業の“共創”が起こす、イノベーションの可能性。

新たな価値が、ここから始まる『RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE Tokyo』

金原弘幸氏

株式会社リコー デジタルビジネス事業本部

CS事業センター 商品戦略室 室長

菊地英敏氏

リコージャパン株式会社 販売事業本部

マーケティングセンター MA・LA販売力強化室 共創マーケティンググループ リーダー

大友裕己

シュア・ジャパン株式会社

インテグレーテッドシステムズ ディレクター

オフィス機器の世界的なメーカーであり、様々なビジネス・サービスを提供しているリコーは今秋、東京・田町に『RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE Tokyo』という新しい施設を開設しました。『RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE Tokyo』は、リコーの最新鋭の商品や真新しいテクノロジーを体感できる企業向けの施設で、9月のオープン以来、早くも50社近い企業の担当者が訪れたとのこと。この新しい空間が、異なる企業の“共創”のきっかけになればとリコーは期待しています。

そして『RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE Tokyo』には、Shureのシーリング・アレイ・マイクロホン MXA910と、オーディオ・プロセッサー IntelliMix P300 が常設されており、メインの音響システムとして活躍。MXA910は、リコーが開発を進めるインタラクティブ・ホワイト・ボード用の収音マイクとしてフル活用されています。そこでリコー 商品戦略室の金原弘幸氏と、リコージャパン マーケティングセンターの菊地英敏氏に、リコーの『働き方改革』への取り組みや、『RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE Tokyo』のコンセプト、同施設にShure製品を導入された経緯についてお話を伺いました。

社内実践の中で見出した新しい価値をお客様にご提案するというのが、リコーの基本的なスタンス

リコーさんは複写機/プリンターの老舗メーカーとして知られていますが、実際には多様な商品/サービスを提供していらっしゃいます。どのように事業の幅が広がっていったのか教えていただけますか。
我々は『働き方改革』という言葉が叫ばれる以前から、業務の効率化ということを考えて商品開発を行ってきました。複写機やプリンターで使われる紙は物理的なものですが、印刷される内容は情報なわけです。それであれば、その情報はデジタル化してしまった方が効率がいい。デジタル・データであれば、紙に印刷するだけでなく、大きな画面に映したり、遠隔地に送信したりといったことが簡単に行えるようになりますからね。そういった考え方のもと、複写機やプリンターはどんどん進化していき、プロジェクターやテレビ会議・Web会議システムなど、商品のラインナップも多様化してきました。また、オフィスの中で複写機やプリンターを効率よく活用するためには、使い方に合わせたオプション構成の変更、使われない複写機の廃止なども重要です。そういったポイントも含めてフォローするべく、“マネージド・サービス”をはじめとする様々なビジネス・サービスを提供するようになり、単なるメーカーから総合的なオフィス・ソリューション・プロバイダーとして成長して参りました。
私どもも同じ視点で活動しています。Shureは音響機器の製造・販売を行っているメーカーですが、企業や官公庁、学校といったユーザー様に商品をご紹介する際、単に“私どもの商品は音が良いですよ”と言っただけでは価値が伝わらないケースが多々あります。お客様にとっては、音響機器は会議室などの設備を構成する要素の一部に過ぎないわけですから、“この機器によって会議がこう変わりますよ”とか、“コミュニケーションが円滑になりますよ”と具体的なご提案をした方が、お客様の反応もポジティブになるんです。
 近年、国は『働き方改革』を大きな施策として掲げていますが、この変化はリコーさんのビジネスの後押しになりましたか。
はい、なりましたね。新たなビジネス機会という意味でもそうですし、更にこちらからお客様にご提案する内容のハードルが上がったように感じています。これまではお客様が新しい会議室をつくる際、プロジェクターは何台、ホワイト・ボードは何台とある程度決まった範囲で具体的な提案をしていたのですが、それだけではなく『働き方改革』に則した提案をしなければならなくなりました。実際、お客様から、“リコーさんが考える将来の会議のあり方、2020年の会議室を提案してほしい”といったご要望をいただくんです。
それはプレッシャーですね(笑)。
商品開発の面でも、要求されるパターン自体が増えてきました。例えば、以前は会議室用のプロジェクターであれば1〜2種類ラインナップすればよかったのですが、最近は会議の規模が多岐にわたっているので、タイプの違う、様々な製品を取り揃えなければならないのです。結果として商品ラインナップが増えています。
『働き方改革』によって、お客様の側も新しいワークスタイルを考えるようになり、その先の未来を見据えるようになったということだと思います。これまでどおりの一辺倒なご提案では納得していただけない。それは大きなプレッシャーでもありますが、メーカーであるリコーと販売子会社のリコージャパンが一体となり、“ワン・リコー”として新しい価値をご提案できるという我々の強みを再認識した次第です。
本当にその通りだと思います。Shureも、他にはない独自のテクノロジーをたくさん持っていることと、長い歴史で培ってきた商品群の幅の広さは大きな強みだと思っています。お客様から、“何かおもしろい提案を持って来てほしい”と言われたときに、それに応えられるだけの十分な商品ラインナップを取り揃えています。『働き方改革』によって、お客様の要望がどんどん多様化しているのは事実ですが、多様な要望への対応というのは、Shureが得意とするところでもあります。
リコーさんが、社内の業務を効率よく進めるために取り組んでいることは何かありますか。
業務の効率化には、かなり以前から積極的に取り組んでいる会社だと思います。約10年前にフリー・アドレスを導入し、営業部門のデスクは7割くらいまで減らしました。当時は、営業端末をApple iPadに替え、外出先への直行や直帰も可能になりました。これにより、それまで7フロア借りていたオフィスを6フロアに削減しましたし、トータルのコストをかなり圧縮することができました。また最近では、社内PHSも全員がApple iPhoneに替えて、グループウェアはLotus NotesからMicrosoft Office 365に移行し、Microsoft One Driveの導入によってテレワークの基盤をつくりました。我々のミッションはお客様にソリューションをご提案することですが、自分たちでやってみないことにはその価値をお伝えすることができません。リコーの基本的なスタンスは、社内実践の中で価値を見出し、その価値をお客様にご提案することです。これは弊社の特徴の一つだと思っています。
かなり先進的ですね。
新しいワークスタイルで重要なのは、自由と責任のセルフ・マネジメントです。テレワークと言っても、会社ではない場所で何をするかというのはその人次第だと考えます。会社ではない場所で仕事をし、それを少しでも進捗させるためには、当然責任感が必要です。自由と責任のセルフ・マネジメントは、『働き方改革』ではとても重要なポイントだと思います。

2018年9月にオープンした新しい空間、『RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE Tokyo』

リコーさんは今年9月、東京・田町に『RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE Tokyo(以下、RICOH BIL Tokyo)』というスペースをオープンされました。こういった新しいスタイルのショー・ルームを開設されたのはなぜですか。
リコー・グループでは現在、“EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES”というバリュープロポジションを掲げて、多様なビジネス・ソリューションをご提案しておりますが、テレビCMなどで“EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES”という言葉だけをご覧になったお客様に対しては、言葉を謳うだけでなく、その世界を実際に体験いただける空間が必要だというアイディアにつながりました。Webメディアにおけるランディング・ページのような、“EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES”を体験できる“ランディング・スポット”をつくろうと思ったのがそもそものきっかけですね。商品に触れていただけるショー・ルームはすでに多く存在していますが、既存のショー・ルームは“As-is(今あるもの), To-be(これからなるもの)”で言うところの“As-is”、『RICOH BIL Tokyo』は“To-be”なのです。例えば『東京モーターショー』におけるコンセプト・ブースのような空間です。ここで我々のロード・マップの先にある価値観、世界観を感じていただければ、今の商品も将来に期待を寄せてお使いいただけるのではないかと考えております。
 また、このような空間をオープンした背景には、危機感もあります。IoT、AI、5Gと、テクノロジーは急速に進化していますし、お客様が情報を得るスピードもますます速くなってますからね。我々が持っているものを小出しにしていくのではなく、“EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES”で目指しているもの、リコーが見据える未来をこの空間で共有させていただくことで、きっと新しい価値が創造できるのではないかと思いました。ローンチ前の新しいテクノロジーに触れたお客様の反応を見れば、我々も気付かされることがあります。お客様との“共創”のための空間、それがこの『RICOH BIL Tokyo』なんです。
具体的には、この空間でどのようなものを体験できるのですか。
例えば、生産性の高い会議、臨場感のあるテレワーク、業務プロセスの効率向上、デジタルデータを活用した現場業務の変革。お客様が働き方改革を進めるうえでの課題に対し、リコーの最新テクノロジーとIoTの力でどのようにお応えできるのかをRICOH BIL Tokyoでご体感いただけます。
また、プリンティング技術の応用やプロジェクションマッピングをはじめとするRICOH BIL Tokyoの様々な仕掛けは、お客様の企業価値、製品・ブランド価値向上の演出に貢献いたします。
広く宣伝されていないようですが、既に多くの企業が『RICOH BIL Tokyo』を訪れたそうですね。
オープンから約2ヶ月の間に、48もの企業様がいらっしゃいました。平均的な滞在時間は約2時間で、午前中に1社、午後に1社という感じですから、ほぼ毎日稼働していることになります。みなさん何かしらのヒントを持ち帰られているようで、嬉しい限りです。広く宣伝していないのは、まずはリコージャパンとお付き合いのある企業様の経営層に近い方たちにご利用いただきたいと考えているからです。顧客接点力の強さはリコージャパンの特徴の一つですので、しっかり対面でご案内していこうと考えております。

エッジの立った企業がコラボレートすれば、新しい価値を“共創”できる

この『RICOH BIL Tokyo』には、弊社のシーリング・アレイ・マイクロホン MXA910と、オーディオ・プロセッサー IntelliMix P300を導入していただいています。そもそもは金原さんのチームから、インタラクティブ・ホワイト・ボード用にマイクロホンを試したいとお声がけいただいたのがきっかけでした。
会議では資料を見たり書いたりしながら会話、議論することが中心になります。会議の90%以上が会話ですが、この会話データが全く記録されず、結果やアクションアイテムだけが残ります。会議の参加者以外に結果に至った背景や考え方など共有できずに、他の会議ではなかなか議論が進まないなどの問題が起こります。そこで我々は、言葉を音声認識で自動的にデジタル化し、それを再利用できる商品を開発しようと考えました。具体的には、会議中の言葉がリアルタイムに文字として表示され、テキストと音声のデータがサーバーに自動的にアップロードされるインタラクティブ・ホワイト・ボードです。そんな商品を実現するためには、収音性能に優れたマイクロホンが必要で、いろいろなメーカーのものを試したところ、Shureさんの製品が一番良かったんです。それで昨年、弊社からShureさんにアプローチさせていただきました。RICOHはアメリカにも開発拠点を置いているのですが、U.S.チームはシカゴのShure本社と直接お話しさせていただいて、日本とアメリカ、並行してプロジェクトを進めてきました。でも、どんなに良い条件がそろったとしても音声認識率を100%にすることはできません。70〜80%の音声認識率を、いかにしてフォローするかを考える必要があります。例えば、ホワイト・ボードに書かれた内容から、音声認識できなかった部分を補うような仕組みなど、開発はまだまだ進んでいます。
ひとことで会議室と言っても、部屋の大きさやテーブルの並びなどによって、そのケースごとにベストなご提案は変わります。音声認識の場合を考えると、全員がハンド・マイクを持てば認識率は上がるのかもしれませんが、コミュニケーションという視点で見ると不自然ですからね。今回のこのケースでは、リコーさんのオフィスに機材を持ち込んだり、開発途中のインタラクティブ・ホワイト・ボードを弊社にお借りして検証を重ねたり、どうすれば認識率が上がるのか社内の技術者の意見も聞きながら試行錯誤しました。ワイヤレスからワイヤード、グース・ネック、天井に埋め込むタイプのものまで、ご提案できそうなものはすべて試しましたね。今回のプロジェクトは、私たちにとっても非常に興味深いものでしたし、とても勉強になりました。
Shureさんからご提案いただいたシステムは、本社の会議室に設置し、第二弾としてこの『RICOH BIL Tokyo』にも導入することにしました。多くの企業の担当者様が来られる空間なので、Shureさんのシステムを使ったインタラクティブ・ホワイト・ボードを実際に体験していただこうと。導入前にShureさんのオフィスで見せていただいたんですが、そのときのデモンストレーションはかなり衝撃的でした。8人で行う会議の音声を、1人1人個別に録音することができたんです。会議は議論ですから、誰かが話し終わるまで、次の発言者が待つわけではありません。同時に発言する場合も多いですし、インタラクティブに言い合うのが会議なわけです。それが1つのマイクロホンでしっかり録音できるということに本当に驚きました。
『RICOH BIL Tokyo』で導入していただいたMXA910は、Shureがこの何年かの間に発表した商品の中で最もユニークな製品かもしれません。薄い筐体の中に、非常に狭い指向性で遠くの音を拾うことができるマイク・ユニットが100以上搭載されていて、同時に複数の音声を高精度にキャプチャすることができます。この空間ですと、8つのゾーンに分けて収音しています。
ヘッドホンで聴くと、まったくノイズが無く、隣りで囁いているような音になるんです。こんなに性能が良いと、会議中に小さな声で“今晩どこに呑みに行く?”なんていう話はできなくなってしまいますね(笑)。ここに来られた企業の皆さんも、このマイクの性能には驚かれます。皆さん、マイクの話をすると机の上を探されますが、実際には天井に付いています。“今度会議室をつくるときはこれだな”とおっしゃっていた方も何人かいらっしゃいましたよ。
今回のプロジェクトで、音の重要性を再認識しました。普通の会議はもちろんのこと、遠隔会議ではマイクやスピーカーの品質がコミュニケーションに大きく影響しますからね。
そうですね。音が途切れてしまうと会議は成立しませんからね。しかしその重要性に見合う投資がなされていないのが実情です。当社が行った市場リサーチによると、AVシステム全体の中での音響機器への投資額は約5%程度でした。一方同じリサーチの結果で、会議における情報交換では音がコミュニケーションの約75%占めていることが明らかになり、70%くらいのギャップがあることが分かりました。私どもとしては、商品をご体感いただいて、音の重要性を理解していただくしかありません。Shureの目標は、高価な音響機器を販売することではなく、ご導入いただいたお客様のビジネスが成功することなのです。是非皆さまに、こちらの『RICOH BIL Tokyo』やShureのショールームで、体験していただきたいと思います。
『RICOH BIL Tokyo』の開設ではShureさんにご協力いただいたわけですが、その技術力には非常に驚かされました。同時に、違う専門エリアでエッジの立った企業がコラボレートすれば、新しい価値を創造できるというオープンイノベーションの重要性を改めて認識した次第です。今後、我々とShureさんだけでなくに別の会社が加わって、3社のコラボレーションが実現するかもしれません。そういった企業同士の“共創”の起爆剤に『RICOH BIL Tokyo』がなっていってくれたら嬉しいですね。
本日はお忙しい中、ありがとうございました。

取材日:2018年10月30日

RICOHホームページ