Shure

「KOBUKURO LIVE TOUR 2017 “心”」でAXT Digitalが安定したRF環境構築とサウンドクオリティーを実現

顧客プロフィール

ヒビノ株式会社 ヒビノサウンド Div.はロック・ポップス系のコンサートや各種イベントの音響システムの企画立案、機材レンタル、オペレートを行う業界のパイオニア。多年の実績によるノウハウ、そして国内トップクラスの現場運営スタッフと機材を有する業界屈指のサウンドプレゼンテーターです。


ヒビノサウンド Div. 東京ブランチPA課
熊谷有希子氏(左)、チーフ 千葉周一氏(右)

課題

回転する円形ステージ+1階席の四方に伸びた花道というステージ構成。観客の視線やビデオカメラの邪魔をしないよう、アンテナを高く設置できない中、広いカバーエリアと安定性の高いRF環境を整える

ソリューション

AXT Digitalワイヤレス・マイクロホン・システム、ハンドヘルド型送信機AD2。AD4Q受信機に搭載のRFメーターと電波品質を評価するチャンネル・クオリティー・メーターによるRF監視

効果

それまで使用していたアナログ・ワイヤレス・システムUHF-Rからの移行もスムーズ。限られた設置環境でも、安定したRF環境構築とサウンドクオリティーを実現した

導入事例詳細

 2017年初夏から秋にかけ、全国15ヶ所、各2公演、合計30箇所というスケジュールで巡った、コブクロによるコンサートツアー「KOBUKURO LIVE TOUR 2017 “心”」。このツアーでは、スタジアム・アリーナクラスの大規模ライブも組まれており、特にツアー終盤の2公演は、京セラドーム大阪、さいたまスーパーアリーナで開催され、多くのファンが詰めかけた。このライブの成功の裏で活躍したのが、Shure最新のデジタル・ワイヤレス・システムAXT Digitalである。


京セラドーム大阪


さいたまスーパーアリーナ

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 この2公演、特に京セラドーム大阪では、安定したRF環境を作るのに制限が課せられた。ツアーでモニターエンジニアを務めたヒビノサウンド Div.の千葉周一氏は「京セラドーム大阪とさいたまスーパーアリーナは、ステージレイアウトはほとんど同じでした。回転する円形ステージが会場の中心に置かれ、それを取り囲むように観客席が配置されています。その円形ステージから四方に花道も用意されています。こうしたレイアウトの場合、ステージ全体をカバーするためにアンテナをどのように配置するかが問題です。さいたまスーパーアリーナでは、フライングスピーカー等を設置する際に重量制限があるため、グラウンド・サポートを使用する必要があり、その傍にアンテナを置けたのですが、京セラドーム大阪にはそれがありません。観客の視線やビデオカメラの邪魔にならないように設置しなければなりませんから、最終的にはFOHとモニター卓の前にある花道の傍へ目立たないように置きました。アンテナは、障害物の少ない場所に置くのがセオリーですから、受信環境としては厳しい場所でしたが、アンテナの向きを調整することで広いエリアをカバーできました」と語る。AXT Digitalは、UHF-Rと比較してD/U比(RF上のS/N比を指す数値)の向上とAXT Digital独自のアルゴリズムを開発、受信性能が大きく向上している。その性能が活きた形だ。

 このAXT Digitalを導入した際に、機材選定に関わった同ヒビノサウンド Div.の熊谷有希子氏が話す。「AXT Digitalを導入した大きな理由は、スペースファクターに優れている点でした。受信機は4chで1Uというサイズ、ホワイトスペースを含む470MHzから714MHzまでの周波数帯域を2台だけでカバーできます。倉庫のスペース確保や、ツアーにおける機材運搬時の労力に大きな差が出てきます。

 加えてAXT Digitalは、より安定したRF環境を作るために、各chにあるRFのピークメーターだけではなく、実際の電波品質を5段階で評価するチャンネル・クオリティー・メーターという新機能があり、2つのメーターでRFの状況を見られるので安心感が違います。少ない機材で安定したRF環境が作れること、そして音質と機器に関しての信頼性が選定の決め手でした」

 AXT Digitalを使い始めたのは、ツアー中だったという。ツアー途中でそれまで使用していたUHF-Rから新製品に変更する事に抵抗はなかったのか。「熊谷と私でチェックを重ね、RFの受信性能はこれまで以上に良くなっていることがわかりましたし、音質もいままでと同じパフォーマンスを持っていました。音質がいままでと同じ、というところはとても重要で、おそらく途中でAXT Digitalに変わったことは、言わなければ誰もわからないくらい自然に導入できたと思います。より性能の良いものに変わるなら、使う条件にあった使い勝手の良い方を選択します。エンジニアとしてはそこだけですから(笑)」と千葉氏。とはいえ、音質はまったく同じだったのか尋ねると「ワイヤレスシステムを使う時にいつも感じていたのは、どうしても音質やレスポンスはワイヤードマイクに敵わないことでした。アーティストや我々もそれを理解して使っています。でも、AXT Digitalに替えたとき、すんなりときれいに音が返ってくるなと思ったんです。それに他の音との分離感がとても良いですね」

 また、「受信機、アンテナ回りをシンプルに構成できる点も良かったです。AXT Digitalは、設定できるパラメータはたくさんありますが、特にそれらを使わずとも扱える操作性の高さを持っています。ワイヤレスシステムを使った事のある人なら、感覚的に扱えると思います」と千葉氏。

 特に気に入ったのは、送信機のゲインが常に最適化され、受信機側を操作するだけでよいオートマチック・ゲイン・レンジング機能とのこと。シュアのデジタルワイヤレスならではの機能である。また、明るい場所から暗い場所まで、横から見てもはっきりと視認できるAD4Q受信機のTFT液晶パネルも優れているポイントとして挙げていた。ちなみに、見た目がスマート、というのも大きな理由だったそうだ。

 その後、ツアーではAXT Digitalシステムの4ch受信機のAD4Qとハンドヘルド型送信機のAD2を4本使用した。4本用意した理由は、基本の楽曲歌唱時にはワイヤードのNEUMANN105を使用しているため、2人が円形ステージで歌う時は繊細なニュアンスまで表現するコンデンサー型のKSM9ヘッド、花道ではメインスピーカーなどとのカブりを考えてダイナミック型のBETA 58ヘッドを使用していたためだ。

 ツアー途中からのAXT Digital導入というリスキーな状況を成功裏に終えた2人。最後に、熊谷氏に今後の拡張予定を聞いた。「現在、すでに31台×2バンド分を導入しています。今後は周波数を自動スキャンして割り当てを行うスペクトラムマネージャーAXT600を各チームに1台用意したいですね。ハンドヘルドの上位モデルADX2FDと組み合せると、バックアップ周波数をAXT600に記録しておけるので、より安全なワイヤレス運用ができます。また、各公演での照明チームとの相談になるかもしれませんが、電波干渉時に2.4GHz帯を使用して送信機に触れることなく運用周波数を切り替えるShowLinkアクセスポイントのAD610も使ってみたいです。

 いま私が考えているのは、Quadversity(クアッドバーシティ)機能による多ch運用です。ホワイトスペースの関係で、ワイヤレス運用に厳しい条件が課せられる場所があるんです。まだ、検証できていないのですが、それをQuadversityが解決してくれる可能性があると考えています。そのためにも、受信機はもっと数を増やしたいですね。理想は、モニターエンジニアやFOHエンジニアが電波状況を一切心配することなく、サウンドだけに集中できるワイヤレスシステム。その可能性がAXT Digitalにはあると感じています」

導入製品一覧

数量
モデル名
説明
1
AD4Q
AXT Digital 4チャンネル受信機
4
AD2
AXT Digitalハンドヘルド型送信機