SHURE AXTが第50回スーパーボウルのレフリーマイクに抜擢

2016年3月7日 SHURE AXTが第50回スーパーボウルのレフリーマイクに抜擢
困難な周波数事情のサンタ・クララでのスーパーボウルをRFエンジニアの大御所ジェームス・ストッフォ氏が振り返る 

年間の放映イベントの中でも、スーパーボウルはもっとも要求の高いライブ・イベントの一つといえます。ライブ・ブロードキャスト・チーム、音楽ライブショー、その他ESPNやNFL Filmsといった重要なジャーナリスト関係者、そしてスタジアム内のインフラストラクチャー・コミュニケーションが絡み合う中、ワイヤレススペクトラムに対する要求は常に高まっており、そして年を追うごとに大きくなっているのです。そんな中、50周年を迎えたスーパーボウルは今年、カリフォルニア州サンタ・クララにあるリーバイス・スタジアムで開催されました。

SHURE AXTが第50回スーパーボウルのレフリーマイクに抜擢

SHURE AXTが第50回スーパーボウルのレフリーマイクに抜擢

イベント用のオーディオハードウェアおよびRFサポートを担当したのはカリフォルニア州バレンシアのATK Audiotek、そしてオーランドに拠点をおくProfessional Wireless Systems。そしてフィールド上のすべてのワイヤレスシステムを担当したのは、16年連続でこの役目を担うジェームス・ストッフォ氏でした。ストッフォ氏はこのような大型放映イベントのコンサルティング以外に、ワイヤレス・インターコム・システムのメーカーであるRadio Active Designsの最高技術責任者も務めています。

「第50回スーパーボウルでの私の役職名は"エンターテインメントRFエンジニア″というものでした。これはNFLのチーフ周波数コーディネーターであるカール・ボス氏が監視する何千という周波数のうち、およそ100種類ほどを任されるということです。フィールドのRF操作、つまりレフリー、ミュージシャンのライブパフォーマンス、その他サポート要員などが私の管理下にありました。プレゲームおよびハーフタイムショー、ゲーム後のトロフィー授与式も含まれます。簡単に言えば、これらすべてのシーンでワイヤレスシステムがダウンすることなく稼動するよう責任を持つ、それが私の仕事だったということですね。」とストッフォ氏は語っています。

フィールド上で最も重要なマイクロホンはレフリーが使用するものです。フットボール・ファンなら誰でも同意することでしょう。この重要な役目にストッフォ氏が選択したのが、ShureのAXTワイヤレスでした。「AXTシステムは本当に素晴らしいです。これに太刀打ちできる製品はまったくないというのが本音ですね。他のどのワイヤレスマイクよりもフロントエンドが強固で、特にこういうイベントではその点がとても重要なんです。それに送信機の周波数やその他の設定を遠隔から切り替えられるというこの性能。まさにライフセーバーとでも言いたいところですよ。」

AXTは真の周波数ダイバーシティを実現する唯一のプロフェッショナルワイヤレスシステムであり、その干渉検出アルゴリズムによりオペレーターに条件の変化を通知することが可能です。「レフリーのマイクのチャンネルは、実はゲーム中にも何度か変更が必要になっていました。こういったイベントでは当たり前のことですけどね。AXTはこれを自動的に実行してくれるんですが、目に見える通知も出すように設定して、私自身が変更に対して最終的に決断を下し、完全にコントロールできるようにしたんです。私自身がそうしたかったんでね。」

ストッフォ氏はATK Audiotekが用意したAXTのチャンネルを6系統使用しました。レフリーを務めたクリート・ブラックマン氏にはAXT100ボディパック送信機が2基装着され、それぞれが別々のAXT400受信機に送信を行いました。「AXT400はデュアルチャンネルで、実際はこれが1基あれば十分なんです。でもスーパーボウルではハードウェアの冗長性もフルに用意したかったんですよ。こういった仕事では、何事にも念を入れないとね。」

さらなる"保険″としてAXT ShowLinkリモートアクセスのためのカスタム・アンテナ・システムもセットアップ。レフリーがフィールドのどの位置に立っていても完全なRFリンクを保証するよう、サイドライン、35ヤードラインにカスタム・ヘリカル・アンテナが設置されていました。

その他の重要な場面、たとえばゲーム後の、勝者デンバー・ブロンコスへのヴィンス・ロンバルディ・トロフィーの授与式でもAXTが使用されました。「NFLにとって、この授与式は大変重要な意味を持っています。ここではワイヤードマイクが使用されますが、バックアップとしてワイヤレスマイクロホンも用意するんです。もちろん放送でワイヤレスマイクが不要なら、それに越したことはないんですが、それでも完璧に信頼できるセットを用意しておかなくてはなりません。だからここにもAXTを選んだんですよ。」

もちろん周波数コーディネーションは大きな課題でした。リーバイス・スタジアムはシリコンバレーの中心部に立っているため、他のどのような都市部以上に過密な干渉ソースの只中にあるのです。「今年のスーパーボウルは今までで一番過酷でしたね。地域のテクノロジー系企業たちが多様なホワイトスペース機材の使用やその他のRFテストをしている上に、スタジアムのすぐ側にはNASAの施設もあるんです。私のスペクトラムアナライザーには解読不能なRFソースが多数示され、もちろんUHF帯域は基本的にフル状態。でも、ちゃんと道は見つかりましたよ。」

彼は現在定期的に担当イベントをFCCホワイトスペースデータベースに登録して、ワイヤレスマイクロホン、インイヤーモニター、通信システムに使用するための周波数を確保しているそうです。「自分たちが担当するイベントの日時と場所をデータベースに登録してホワイトスペース機器の周波数に対して優先権を持てるよう、プロダクション企業がPart 74 FCC免許を取得することはとても大切です。これで少なくとも理論的にはホワイトスペース機器に干渉されることはありませんからね。私は去年から、すべての担当イベントを登録していますよ。」

ストッフォ氏にとって成功の鍵は、限られた周波数リソースをいかに効率的に使えるかにあると考えています。「私たちはゲーム中、周波数を再利用していました。国歌が終わると、その周波数を再割り当てする。ハーフタイムではレフリーのAXTボディパックを遠隔でシャットダウンして、この周波数をライブショーのパフォーマーたちに使用する。後半戦のために、これをまた切り替えて戻す。こういった具合に、すべての周波数は何度も使用されていたんですよ。」

プレゲームおよびハーフタイムのショーのパフォーマーたちは、概して自分たち自身のパーソナル・ワイヤレス・マイクロホンを使用していました。たとえばコールドプレイも自分たちのお気に入りであるUHF-Rシステムを使用していたのです。しかしこれは、ハーフタイム時の使用可能なUHFスペクトラムの少なさ、LEDステージフロアによる干渉の可能性などから、他の部分での機器の選択においてさらなる厳格さを求めることになります。結果として、すべてのミュージシャンたちのインイヤーシステムにはShure PSM1000が使用され、またストッフォ氏はVHFバンドで操作できるナローバンドのRAD UV-1Gインターコムシステムを使用してUHF周波数の30チャンネルをクリアにしました。こうしてミュージシャンたちのワイヤレスに十分なスペクトラムを提供したというわけです。

「今年もまた、見事なスーパーボウルとなりました。RF問題は皆無で、レフリーの言葉はすべて明確に捉えられていました。イヤモニも問題なく、アーティスト、そして彼らのエンジニアたちさえ、満足の笑顔にあふれていました。これこそ皆が求めることであり、だからこそ皆また戻ってきてくれるというわけです。」とストッフォ氏は振り返っています。